『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』を100時間プレイして、とりあえずストーリーだけクリアした

 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、2023年5月12日に任天堂から発売された、ゼルダの伝説シリーズ最新作である。前作『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』クリア後の世界が描かれる続編で、引き続きオープンエアーのスタイルが採用されている。

 前作も一言でいえば神ゲー。他のオープンワールドゲームにはない遊びを体験できるゲームであった。今作では更に面白さのチャンネルが増え、インタラクティブなゲーム体験として理想的といえるものに仕上がっている。

 100時間ほどのプレイでとりあえずストーリーだけクリアしたが、祠やコログなどの収集要素をコンプするには200時間以上は要するのではないだろうか。本記事ではストーリーの核心に関する内容の記述は避けるが、ゲーム内の解禁要素などには触れていくので、これからプレイする予定の人はこんな記事を読んでないでさっさとプレイしてほしい。「何ができるようになるか」を自分で知ることは本当に楽しいので。

更に自由になったパズル

 本作のリンクは、モノとモノをくっつける「ウルトラハンド」、天井を通り抜ける「トーレルーフ」、モノの動きを巻き戻す「モドレコ」の3つを主に駆使してメカニカルパズルを行う。使える能力が前作から一新されており、これだけでもかなり新しい遊びの提供になっている。

 パズルは主に「祠」と呼ばれるフィールドとは別の空間で行い、用意されたグッズを利用して自由にモノボケをする。何を利用するかは祠ごとにテーマが決まっており、モノの使い方のチュートリアル→応用編のように段階的に問題が出される。謎の文明の遺産「ゾナウギア」を使った工作がお題の祠が多く、祠を見つける度に新しい遊びが提供されることにウキウキだった。ご褒美だけ貰える「ラウルの祝福」が出るとがっかりする。それくらい今作の祠はとにかく楽しい。難しくても「わかんねえ!インターネットで調べる!」ってならないレベルなのが絶妙で、程よい達成感がある。

 想定された模範解答はあるものの、祠はかなり自由に攻略できるようになっている。例えば、丸太で船を作って水上を渡ってゴールを目指す祠では、とにかく丸太を長く繋げて向こう岸まで届かせてしまっても良い。ウルトラハンドでモノを高く持ち上げて落とし、モドレコで戻しながらトーレルーフで高所に移動などもよく使った。想定されている挙動ではあるだろうが、正攻法とは言い難い。

 例のように今作のパズルは様々な解があることから、SNS上やゲーム系Webメディアなどで大喜利となって盛り上がっている。自分が攻略したところを他の人がどう攻略したか確認するのも面白い。

戦闘を変えたスクラビルド

 今作ではモノとモノをくっつけるウルトラハンドに付随する能力として、武器や盾にその辺に落ちているモノや、持ち歩いているアイテムなどを組み合わせる「スクラビルド」という要素がある。
 前作のネックといえば、強い武器を拾ってもすぐに壊れて消費してしまう。強い敵と戦うと見返りよりも武器の消費が大きくなってしまう。などの点が挙げられるだろう。

 スクラビルドはその点を見直し、さらに新しい遊びとして昇華している。今作の拾える武器は大部分が瘴気の影響で朽ちており、本来の攻撃力を発揮しない状態になっている。そこにスクラビルドで素材を組み合わせることで、攻撃力を強化したり特殊な能力を付与して使うのが基本となる。剣や棒に石をくっつけると「ハンマー」、葉っぱをくっつけると「うちわ」などの素朴な組み合わせもあるが、モンスターが落とす素材を組み合わせて攻撃力をブーストするのが主な用途だろう。

 今作では強いモンスターほど、スクラビルドすると大きく攻撃力が上がる素材をドロップするようになっている。武器ポーチとは別にスタックできるため、持ち歩きの問題もある程度解決している。ベースとなる武器は選ばなくてもそれなりに戦えるのだ。もちろん探索が進めば強いベース武器も手に入る。

 盾のスクラビルドは、防御性能よりは特殊効果の付与がメインか。ゾナウギアで火炎放射、キノコで状態異常盾などにできる。僕のお気に入りは爆弾。ガードすると爆発、盾サーフィンをすると爆発でリンクが大ジャンプするため、敵に囲まれた時などに有効。大好きすぎてスクリーンショットを見るといつも爆弾を背負っている。

 更に、矢にもアイテムをスクラビルドして撃つことができる。火炎の実で火矢、キースの目玉で誘導矢、魔物素材で攻撃力アップなど、とにかくストックできるアイテムならだいたいなんでもぶちこめる。ギブドの骨など武器にスクラビルドするとすぐ壊れてしまう素材も、矢にして撃つと有効活用できて面白い。ただし、本当になんでもスクラビルドできるため、目当ての素材を探すのが大変なのが難点。よく使う順ソートなどはあるが、なんかもうちょいなんとかならなかったか。

戦闘のお助け要素

 ストーリーが進むとNPCが一緒に戦ってくれるようになるのは非常に嬉しかった。攻撃頻度は低いが、多対一の状況でターゲットを引き付けてくれるのがありがたい。これは体感だが、乱戦の状況では敵が1体だけリンクに向かってきて1対1の状況を優先的に作り、ラッシュ攻撃のチャンスを与えてくれているように感じた。これが任天堂のおもてなしマインド。

 前作のオバサンダーのような戦闘スキルも順次解禁されるが、今作のそれはかなり使い勝手が悪い。クールタイムが短く、探索向けの能力になってるのは良いんだが、使用方法が同行してるNPCにインタラクトなのが最悪。仲間NPCたちは戦闘中かなり自由に動いているので、探して追いかけてインタラクトしないとスキルが使えないのだ。特にインタラクトしてから弓を撃つと発動なのに本人はインファイトしてるルージュが困る。あと、探索中も微妙に距離をとって歩いてるので使いにくい。リンク嫌われてんのか?

 ていうかオバサンダーを返してほしい。ルージュはロリサンダーと呼ぶには成長しすぎだし。僕はオバサンダーなしでライネル倒したことないんだぞ。

ユニークなボス戦

 こちらはゼルダの伝説らしく、閃きを重視した戦闘になっている。ウルトラハンドやトーレルーフを活用できるボスとして設計されたであろう「ブロックゴーレム」は本当に倒し方が多彩だ。全然気付かずに弓でコアを狙っていたよ。ボス系のモンスターはギミック対処→ダウン中にダメージを稼ぐというサイクルが基本だが、工夫や攻撃力次第で色々とショートカットできるのが面白いところ。地底オクタコスは次に挑むなら絶対に自動放水車とかを作ってからいく。ラスボスより害悪だぞあいつ!

 ボス戦がイベント演出の一部となることはよくあるが、やはりアクションゲームはその手の演出に非常に強い。

様々な視点での探索

 今作では「鳥望台」と呼ばれるランドマークに到達(ちょっとしたトラブルが起こっている場合もある)することで、マップがオープンしていく。その際にリンクが空高く打ち上げられてプルアパッドで周辺の情報をスキャンするという演出が入るのだが、その後も鳥望台を訪れれば何回でも打ち上げてもらえる。高高度から見回してマーキングや滑空することで地上の探索を快適に進めることができるだろう。また、探索中に見つけた空中からの落下物にモドレコを使うことでも一気に上空に到達可能。ゲーム中、頻繁に陸路をショートカットする機会が訪れる。

 上空とかも探索せなあかんし、地上は楽させたろ!……という訳では特になく、上空からでは見つけにくい洞窟とかがやたら多い。このゲーム、上に行くのは比較的簡単だが、下にいくのが難しい!じゃあなんで飛ばしてくれるんだろう。派手で気持ちいいからか?

 1つの洞窟には必ず1体の「マヨイ」という生物がいて、そいつをしばいてアイテムを回収するのがわかりやすい目的になっている。他にも意外な場所に繋がっていたり、洞窟の中に祠があったりして探すのが楽しい!上空移動は快適だが、下道を歩く楽しみもしっかり作り込まれている。

とっつきやすく、懐の深い工作

 物理演算を利用したゾナウギアの動作は今作の目玉である。扇風機などの動力を必要とするゾナウギアは、叩くことでバッテリーが切れるまで動作する。これを木の板などのありものと組み合わせて乗り物を作り、探索の助けとするのだ。ゾナウ文明は上空に居を構えていたらしく、空島の拠点などはもちろん、そこから降ってきたという設定で地上にもやたらとゾナウギアが落ちている。上の画像で使っているゾナウギア「翼」は単体では動力を持たないが、リンクの立ち位置を変えてバランスをとると結構な距離を滑空して面白い。これが物理演算ってやつ?

 見た目で使い方がわかりやすいのも良い。扇風機は乗り物に推進力を与えたり、複数使えば空も飛べる。タイヤは板とかにつけると乗り物になり、操縦桿をつけるだけで進行方向を操作可能になるのもシンプルだ。接着位置がある程度スナップするので、なんかちょっとタイヤの向きが違って想定通りに動かない!とかにもなりにくい。

 もちろん移動に使うばかりでなく、兵器として運用もできる。敵に自動で照準を合わせる殺意の高いゾナウギアなどもあるらしく、それにビームや大砲を組み合わせると殺戮兵器の完成だ!僕は見つけられなかったので人力で戦っていた。TLで見るティアキンと文明レベルが違いすぎる。

 パーツは落ちているもの以外にも、ガチャで手に入って持ち歩きできるものもある。ガチャのリソースはお金ではなく、ガーディアンを倒したり、鉱石を冶金して手に入れるアイテム。無駄遣いはできないがそんなにカツカツでもなく、何より使用するリソースが他と被らないのが良い。ロケットのゾナウギアは常にいくつか持ち歩いておきたい。盾にスクラビルドして高所に移動したり、コログに括り付けて花火にできる。

多岐にわたる収集・強化要素

 本作はアクションゲームだが、成長要素が多数用意されているため、そんなにアクションが上達しなくても多分クリアできる。逆にめっちゃ上手い人はいきなりラスボスに向かっても良い。僕は上達しない人だが(ジャスト回避が全然うまくならない)、ハートを増やしまくって料理を作りまくって防具もカチカチにしたらラスボスと真正面から殴り合って勝てたので大丈夫。

 この世界を探索……というか、遊んでいる過程で手に入る色々なものがリンクのパワーアップに繋がる。祠の攻略でハートやがんばりゲージ、コログを見つけてポーチの拡張、その辺の草や虫は料理や防具の強化に使うことができる。特に防具の強化は効果が大きく、序盤は何と戦っても即死しがち。ゲームオーバーからのリトライがもう少し早ければ気にならない点であったが。

 探索が自由すぎる弊害もある。パワーアップ要素の解禁順序がプレイヤーによって異なるのだ。防具の強化は重要だが、サブクエストの攻略が必要になるため、メイン優先!サブクエは後回し!という人だと解禁はかなり遅れることになるだろう。僕は地底の探索を後回しにしていた為、ゾナウギアの運用に重要なバッテリーの拡張がかなり終盤……プレイ開始から90時間後?くらいになった。まあ、少し不便なくらいな方が旅の思い出ができていいよ。なんなら防寒具もずっと手に入らなくて、飯をめっちゃ食いながら風の神殿まで登ったからね。

 まあ強化要素に関しては、前作とほぼ同じ。新要素分やや増加程度ではある。

フィールドを利用したイベントや謎解きもユニーク

 ツイッターをしていたら「コログ」や「カバンダ」で遊んでいる画像や動画を目撃したことがあるだろう。どちらも各地で出会い、お手伝いすることになるのだが、毎回微妙に違った対応を求められて面白い。

 コログは各地で疲れちゃっていてェ、狼煙が上がっている友達がいるところまで運んであげることになる。近場だったらウルトラハンドで直接掴んで運んでやっても良いのだが、水場の向こう側や山の上から狼煙が上がっていることもある。そんな時は、どうするかもうおわかりですね?ロケットのゾナウギアに括り付けて飛ばしてあげよう。上の画像は馬でコログを引きずり回しているところ。

 カバンダは各地でエノキダ工務店の看板を支えて立っていて、周囲に落ちているモノを使って看板が自立するようにしてあげると喜ぶ。周囲にあるものが毎回違ったり、看板の形がちょっと違ったりして一工夫が必要だ。成功したらありえんほど褒めてくれるのも良い。

 その他にも、メカニカルパズル的なものから、周囲の環境から閃きを求められるものまで様々なクエストとユニークなNPCに出会うことができる。メインクエストの一部で「空飛ぶ魚」の「雫」が全然わからなくて30分くらい探し続けたが、見つけた時はかなりの納得感があり、攻略調べなくてよかった!となった。環境タイプの謎解きは贅沢だ。

 えっ、尾行?!

シビアな地底探索

 上空・地上以外にも、ハイラル各地に空いた深穴から地底を探索することができる。今作は空島も探索できるのか~程度に思っていたら、地上とほぼ同じ広さの地底フィールドがあった。地底は常時暗闇に包まれており、地上の洞窟などで手に入る「アカリバナ」を使って周囲を照らしながら探索することになる。余談だが、地上の洞窟はアカリバナが咲いているという設定のおかげか非常に明るい。明るいオープンワールド助かる。

 常時暗いだけでなく、踏むとハートが減る瘴気床を避けて行動しなきゃいけなかったり、地底のモンスターから受けたダメージは「破魔の根」に辿り着くか特定の料理を使わないと回復しないなど、厳しい条件での探索を要求される。その代わり、地上では手に入らない装備や鉱石が手に入るなど見返りも魅力的だ。

 僕は「マスターソードを手に入れたら地底探索に取り掛かろう!」と謎の決意をしていたので、本格的に探索するのが終盤になってしまったが、能力の解禁やストーリーに関連するイベントもあって地底探索もかなり面白い。このゲーム、本当にどこから攻略すればいいの?

予想外にストーリーが面白い

 本作のプロローグは、ハイラル城の地下を探索していたゼルダとリンクが、封印されていた魔王ガノンが復活する瞬間に遭遇し、リンクとマスターソードは力を失いゼルダも奈落に消えてしまう。空島で目覚めたリンクはウルトラハンドの持ち主ラウルに導かれ、魔王を倒すための冒険が始まる……という感じ。

 キーワードはゼルダの「私をさがして」というセリフ。地上に戻ったリンクは、目撃情報などを元にゼルダを探すことになる。そしてメインストーリーを進めていくと「私をさがして」の真意がわかってくる構成が非常に面白い。ストーリーが進むほど探したくなる、これは。

 主なストーリーは前作と同じ「4拠点の調査」と、写真の場所と似たコンテンツの「地上絵巡り」となる。4拠点の調査は現地の人と交流して異変を解決、悪いやつを倒すって感じで、地上絵巡りはゼルダの足跡を辿ることになる。この地上絵のストーリーが実にタイトル通り「ゼルダの伝説」になっている。ゼルダの伝説がこんなにゼルダの伝説なことある?前作のヒロインはミファー派だけど、今作のゼルダはかなり好きになった。こんなに覚悟キマった女いねェよ……。

 実は前作はマスターソードを手に入れずにクリアしたんだけど、今作はちゃんと手に入れた。マスターソードを手に入れるシーンがマジで神話とか宗教画かという神々しさだった。ストーリーは描きたいシーンから逆算して作るみたいなのを聞いたことがあるけど、これはまさにそんな感じがする。

総評:神ゲー

 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、シリーズ最高傑作と言われた前作を上回る完成度であり、現代のゲームの到達点の1つと言えるだろう。自由度の高いパズル、新要素により広がった戦闘の幅、探索する場所の多さ、物理演算を用いた工作、豊富な収集要素、ユニークな謎解き、そしてストーリーと、あらゆる要素が高いレベルで纏まっている。ゼルダの伝説シリーズのファンだけではなく、ゲームを愛する人はぜひプレイしてみてほしい。