FF4の続編『ファイナルファンタジーIV ジ・アフターイヤーズ -月の帰還-』ネタバレ感想。今更やらなくていいゲーム

 ファイナルファンタジーIV ジ・アフターイヤーズ -月の帰還-(以下4TA)は、1991年に発売されたファイナルファンタジーIVの続編で、2008年にケータイアプリとして配信され、累計350万以上のダウンロードを記録した。2011年にはPSP版が発売され、3Dグラフィックにリメイクされた。今回は2013年に発売されたスマホ版をプレイした。開発はドラクエやFFのモバイル版でおなじみのマトリックス。

 本作はFF4の十数年後の世界を舞台に、セシルとローザの息子セオドアを主人公に据えた物語である。前作のキャラクターやそれに関わりのある新キャラクターも登場し、物語を盛り上げる。テラのおばけもしつこいくらい出てくる(喋らなかったような気はするが……)。

 ゲームシステムは前作のアクティブタイムバトルを継承。月齢やバンドなど、本作独自のシステムも盛り込まれている。見た目はDS版のFF4リメイクだけど、戦闘内容はオリジナル寄りかな?

 どうして今更急に4TAをプレイしたのかというと、地味にセールの度に買って1から進めていたFFピクセルリマスターが4まで終わったので、この機会にやったことなかった4TAをプレイしようと思いたったのだ。

 ちなみにこのゲームはWikipediaにストーリーのネタバレが全て書いてある。

盛り上がらないオムニバスストーリー

 FF4のディレクター、時田貴司氏の代表作『ライブ・ア・ライブ』といえば、それぞれの章で盛り上がる素晴らしいオムニバスストーリーが有名だ。しかし、FF4TAのオムニバスストーリーから得られた体験は、どちらかというと『オクトパストラベラー』に近い。

 本作では始めにプロローグとなるセオドア編をプレイし、それをクリアするとリディア編やエッジ編など6つのストーリーが選べるようになる。そして、全てのストーリーをクリアすると物語の真相に繋がるカイン編などが順に解禁されていく。

 物語のあらすじは、セオドアが修行中に隕石から現れた謎の少女がバロンを襲撃して、セシルを操りクリスタルを集め始める。かつての仲間たちは世界の異変を感じ取り、それぞれバロンを目指す。という感じで、6人の仲間が各地で小さな問題を解決しつつ、なんだかんだあってバロンを目指すところまでのストーリーがプレイアブルとなっている。この物語をオムニバスで展開するにあたって、2つの問題がある。

 1つは各ストーリーがそれほど盛り上がらないことだ。各ストーリー1時間程度のボリュームで、前作を下敷きにした話……というか、ほとんど焼き直しのような物語が展開される。そして、特に大きなクライマックスもなく最終編に続く!という感じなので、盛り上がりに欠ける。

 2つ目の問題点は、ゲームの序盤部分を繰り返し遊ぶことになることである。前作キャラクターも十数年を経て見事に弱体化しており、せいぜいラ系魔法くらいまでしか使えない。とはいえ、ラ系魔法で弱点を突くと2000くらいダメージを出せるパロム編などはまだマシな方。その後にプレイしたギルバート編は30程度のダメージしか出せなくて本当に辛かった。

 しかもギルバート編のPTはこんな感じだ。ヤン編の仲間はモンクA~Cだったり、雑な仲間が多いのも特徴。

同じロケーションが何度も出てくる

 FF4と同じ舞台で物語が展開されるため、訪れる場所はほとんどがFF4で見たことのある街やダンジョンだ。特にカイポ北の地下水脈(FF4でテラが仲間になり、オクトマンモスと戦ったダンジョン)は集中的にこすられ、ポロム編の回想で1回、ギルバート編で3回、カイン編で1回通ることになる。本当に何なんだよ。特に往復させられるギルバート編。FF4では1回抜けた後はホバー船でショートカットできたんだが?ボスもオクトクラーケンとクラーマンモスが出てくる。なんなんだきみたちは。

 真月編の後半で向かう月面で遂に新規マップが!と思ったら、ダンジョンに入ったら月の地下渓谷の色違いだったのはガックリした。本物の月の地下渓谷も真月編の前にプレイする月の民編で出てくる。真月編の地下渓谷はただの地下渓谷ではなく、ゾットの塔などの過去ダンジョンも間に挟んでくるドラクエの隠しダンジョンみたいな空間になっている。リソースの活用もここまでくると大したもんだ。

 前作で行ったことのある場所を中心に物語が展開されるので、どうしてもストーリーのスケールが小さく感じる。なんか、ご近所で物語が完結している感じというか。

3Dの演出がチープ

 本作はPSP版から3Dにリメイクされたのだが、その3DのクオリティはニンテンドーDSレベルである。DS版のFF4(3Dリメイク)はプレイしていないのだが、おそらく大部分が流用だと思われる。3D化したことで、キャラの表情やアクションなどの表現が広がっているはずだが、正直クオリティが低すぎる。しかもイベントシーンが冗長になり、ボス戦をやり直したい時にイベントスキップ機能もなかった。これなら2Dで遊びたかった。

見た目がただのミスリード

 4TAには各オムニバスストーリーで、ターバン姿の「謎の男」、白髪半裸の「黒衣の男」、リディアに似た容姿で幻獣を使役する「謎の少女」が登場する。これらのキャラクターが自らの身分を隠している理由はストーリー上特になく、プレイヤーを驚かせるために隠しているとしか言いようがなかった。

 セオドア編で登場する「謎の男」は、試練の山で分裂した善のカインである。ターバン姿の理由は特にない。同行するセオドアに正体を隠していた理由も多分ないし、バロンに着いたらさっさと名乗る。

 リディア編で登場する「黒衣の男」は、ゴルベーザの甲冑の下の姿である。なんで色黒半裸なのかよくわからない。寝起きの格好のまま月から来てしまったんだろうか。

 敵として登場する「謎の少女」は上位存在によって作られた実験的生物「マイナス」である。緑髪で召喚獣を使役するなどリディアと似たパーソナリティを持っているが、特に関係はなかった。

なにやらよくわからん結末

 4TAの黒幕は、クリスタルを創造し、生物の進化を記録するために宇宙にバラまいた「クリエイター」と呼ばれる上位存在。セシルたちの住む星のクリスタルも回収しにきたが、逆に真月に乗り込まれてお陀仏となった。崩壊する真月から脱出する際に、敵であったマイナスが味方してくれるが、理由は謎。更に、リディアが帰り道でマイナスの幼少体をお持ち帰りし、エンディングで「クオレ」と名付けて一緒に暮らしてたのも謎展開すぎる。

 てか、地上編では圧倒的な存在として描かれ、負けボスとして何回も戦った「謎の少女」を、月の民編ではゴルベーザとフースーヤが普通に倒してるのなんだったんだ。地上の民弱すぎか。

 物語全体としても、セオドア主体かと思いきや別にそんなことはなく、カインが自らの悪の心を(今更)受け入れたり、セシルが自分の悪の心と戦ったり(まだおったんか)30~40代の方も平等に成長する感じ。だいたいFF4でもう見た。

ゲーム部分は普通

 システム的にはFF4に月齢とバンド技をそのまま乗せた感じ。各オムニバスストーリーは編成固定で、回復役がいないストーリーもあって若干難易度が高い。オムニバス編こそ序盤の繰り返しで退屈だが、真月編の後半に入るとレベルがどんどん上がっていくのはわりと楽しかった。最初は自由にPTを組んでみたけど、真月編のザコ敵が強すぎて全く倒せないので、初期からHPの高いカインとゴルベーザ軸で組み直したりした。

 月齢は満月や新月など月の状態によって通常攻撃や魔法などの効果が増減されるシステム。黒魔法を中心に攻撃してくるボスには黒魔法の威力が下がる上弦の月で挑むと楽になったり、特定の月齢でのみエンカウントするモンスターがいたりする。切り替える方法は宿屋かテント・コテージで、休むたび順番に切り替わるので、月齢をわざわざ狙うのが面倒だなという気持ちしかなかった。

 バンド技はいわゆる連携。真月編の後半では自由にパーティを組むことができるため、膨大な数のバンド技が用意されている。演出も割とユニークで、スキップできるのが素晴らしい。4TAはFF4にあえて寄せているのか、敵のカウンター行動が多めなので、ちまちま攻撃するよりバンド技で大きな一撃を叩き込む方が有利なのはちょっと面白いところか。最終的にはセオドア・セシル・ゴルベーザの3人技で3万くらいのダメージを出していた。

やりこみ要素がわりとある

 月齢モンスターや隠し召喚獣、ラストダンジョンの青い宝箱など、やりこみの余地はそこそこ用意してあるように感じた。途中のボスで全体攻撃に耐えるために全員のHPが3000を超えるまでレベリングをしたけど、青宝箱のモンスターは全然倒せなかった。経験値やドロップ率を上げるアクセサリやオートバトルもあり、ファーミングは快適。

総評:今更やらなくていい

 本作は、ファイナルファンタジーIVの序盤を繰り返すような展開で、物語も焼き直しのような印象を受ける。また、結末はSF的な要素が強く、ファンからも賛否両論のようだ。ゲーム部分も平凡で、特に目新しい要素はない。
 当時はケータイアプリとして配信されたため、当時の技術水準では許容されていた部分が大きかったと思われる。しかし、今更プレイすると、その粗さが目立つ結果となった。
 4TAは、ファイナルファンタジーIVのファンからは好評なイメージであったが、必見の作品ではない。蛇足とまでは言わないが、特に履修しておくべき内容でもないだろう。