『リトル ノア 楽園の後継者』レビュー

 『リトル ノア 楽園の後継者』はサイゲームスとグランディングが開発、サイゲームスが発売したお手軽ローグライトアクションゲームである。対応機種はSwitch/PS4/Steam

 元となったソーシャルゲーム版『リトルノア』は、いわゆるクラッシュオブクラン系のリアルタイムストラテジー。他プレイヤーの方舟を襲って資源を奪ったり防衛したりする血生臭いゲームだ。僕もプレイしていたけどCOOPでユニットを揃えるのが面倒でやめた気がする。2019年にサービス終了した。

「ローグライト」として生まれ変わったリトルノア

 ローグライトというジャンルをご存知だろうか!「ローグライク」はプレイするたびに成長などがリセットされ、ダンジョンの構造が変化、落ちているアイテムもランダムみたいなジャンルのゲームのことを指す。ローグライトは定義が曖昧で、一部の要素がローグライク(ダンジョンの構造とか落ちてるアイテムがランダム)であったり、永続の成長要素があって難易度の低いローグライクだったりする。要するに、開発者にとって都合の良い言葉なのである。本作に関しては後者の「簡単なローグライク」が該当する。

このゲームの特徴

 ノアが装備した「アストラル」を順番に召喚して攻撃するのが最大の特徴。ランダム生成されるダンジョンに潜り、装備を整えながら全3ステージの踏破を目指す2Dアクション。倒れると手に入れた装備がマナに変換され、ノアの能力を永遠に強化する要素に使える。

アイディアと作り込みのアクション

 ノアはかなりキビキビと動き、方舟の強化によって習得する「エーテルスラスト」を使うと更に隙がなくなる。手触りがよいのはもちろん、操作のレスポンスが素直なので、アクションのトロさによる難易度増加がないのが好感触。耐久はHP制で、アイテムを拾ったりポーションで回復できる。

 ノアのアクションの中でも独特なのが、装備したアストラルを順番に繰り出す通常攻撃である。出の早い近距離攻撃や大ぶりの強攻撃、移動を伴う攻撃や遠距離攻撃など30種類以上あり、好きな順番でセットしてコンボを狙っていく。ノアはデフォルトで2段ジャンプもできるが、上昇系の攻撃をセットしておくと上方向への機動力が増し、浮いている敵への対処が楽になるので個人的にはオススメ。アストラルによって発動速度だけでなく、発動後のクールタイムも結構差があり、最初と最後は軽めのアストラルにすると快適な印象。…とまあ、色々考える余地があって面白いシステムである。

 アストラルはスキル枠にも装備することができ、アタック枠とはまた違った攻撃をする。こちらはコンボとかはできずに大技系といった感じで、隙が大きくクールタイムが長め。回復やバリアなどアタックにはない効果が発動するのが特徴。でも本当に隙が大きいので最終的には僕はあまり使わなくなった。おそらくアタックよりスキルの方が使い勝手の良いアストラルとかそういう個性もあったと思う。

 ダッシュは空中可能だがデフォルトでは無敵時間がない、特定のアクセサリーを取得すると無敵が付く。アニマバーストはいわゆるボムで、モーション中は完全に無敵なのでノーダメージ攻略の強い味方となる。エーテルスラストは指定した方向に体当たりし、その際アタックのクールタイムを全てリセットするというテクい技。

ダンジョンの探索

 1つのステージは3つの通常エリアと2つのボスフロア、通常エリアは複数の部屋で構成されている。一番オーソドックスなのは全てのモンスターを倒すと報酬が手に入る部屋で「ノーダメージで倒す」「一定時間内に倒す」などランダムで提示されるチャレンジをこなすと報酬が増える。クリスタル・宝箱部屋は報酬のみの部屋、錬金壺はローグライクにありがちな報酬選択タイプ。トラップ部屋は罠をくぐり抜けると報酬、鍵を持っているとショートカットできるのが良い塩梅。モンハウ部屋は強化されたモンスターを数グループ倒すと豪華な報酬が手に入る。敵にスーパーアーマーがついているので高難易度だとそれなりに危険で、後半のステージではチャレンジするかちょい悩む感じだった。ショップも各エリアに必ず設置されており、任意のアクセ・アストラルを購入できるため、ある程度自分の思った通りにビルドを伸ばすことができる。エリア内は基本的にRTAでもなければ隅々まで探索することになるが、踏破した部屋に移動できるワープが非常にテンポよくダレない。

道中の強化要素

 基礎ステータスを上げるクリスタル、攻撃のバリエーションを増やすアストラル、属性を強化したり様々な効果のあるアクセサリの3つの柱でノアを強化していく。
 クリスタルは3種類から選んで取得する(たまに2種類)。赤は近接攻撃、青は遠距離攻撃、緑はコンボ攻撃を強化する。HPや攻撃力などの基礎ステータスも上がり、冒険の後半になるほど与えるダメージがスケールアップしていく。数字がデカくなるのは単純に楽しい。
 アストラルも道中の宝箱や錬金壺で手に入る。同じアストラルが手に入ると能力が少し上がり、手に入った数だけアタック枠に同じアストラルを並べることができる。道中で手に入るアストラルはその冒険を一番大きく左右する要素。剣のクイーン引いたらクリア、もうあいつ一人でいいんじゃないかな。
 アクセサリの効果も非常に拡張性が高い。単純にステータスを上げるもの、属性染めなど条件付きで攻撃力を増加するものや、3段ジャンプができるようになるなどアクションを拡張するものまである。数字だけ調整するのではなく、面白い効果を実装しようというやる気を感じる。

方舟の修復

 本作は主人公ノアの永続強化である方舟の修復要素が非常に多い。おそらく、永続強化のバリエーションだけでいうとHadesよりも多いんじゃないだろうか。ステータスの強化、お助け施設の追加、強力なアクセサリの追加など項目も選択肢が多い。流石にこれだけ強化要素があればいつかクリアできるだろうと、アクションが苦手な人も安心して挑戦できる。
 他にもプレイ内容のアチーブメントで新しいアニマやトロフィーが取得できる。アニマは着替えるとちょっとしたバフ、トロフィーは飾ると攻撃力アップや鍵をいくつか持ってスタートなどの冒険が有利になる効果が発動する。

不満点

 ストーリーがあるが、非常に短い。あと、周回しているとなぜかラスボスとだけ毎回同じ会話するのも不要だと思った。何度も潜るゲームなのだから、会話にバリエーションを出せなかったのだろうか。

 ステージ数が少ない。3ステージ4ボス(1つはラスボスの第2形態)に中ボス3体は少ないと感じた。1,2ボスが3パターンからランダムなのは良いと思うが、せめてもう1ステージはほしい。定価がお安いのでこんなもんかな?

 難易度別の変化が乏しい。難易度を上げると敵からのダメージが増え、回復アイテムの出る頻度が少なくなる程度の変化しかない。しかもイージー・ノーマルとハードは別データを作成しないと変更できない(なぜ?)。クリア後にHadesの懲罰みたいな難易度調整要素があればよかったんだが。

 すぐにクリアできてしまう。方舟強化が全然終わらないうちに、難易度ハードでも5時間くらいでクリアできた。強化・収集要素が豊富にあるけど、その受け皿となる強敵が足りない。ちなみに、ノアが1撃で死んでしまうオワタ式ことHELLモードも3回ほどチャレンジしたらクリアできた。

 不満点書き起こしてると、改めてHadesは恐ろしい作り込みだったんだなと思わされた。先にHadesをプレイしていたことが不幸だったな。あれが基準になってはいかん。

総評:アイデアと物量を兼ね備えた良作

 Hadesと比べてしまうと流石に見劣りするが、アクションが快適で装備に拡張性があり、アストラルコンボのアイディアも素晴らしく、そして何よりキャラクターが可愛いことで唯一無二のローグライトとして成り立っている。サイゲは面白くなるまでリリースしないってのはマジっぽい、金が無限にあるため無限に開発できるんだ。
 今後のコンシューマ展開にも期待できる。サイゲームス、メタルマックスを頼んだぞ!