「タクティクスオウガ リボーン」はスクウェア・エニックスが発売したタクティカルRPGである。
PSPで発売された「運命の輪」をベースに、シナリオのフルボイス化、BGMの生演奏化に加え、バトルデザインが大きくリメイクされている。シナリオの追加要素は「運命の輪」準拠となる。
ゲームバランスを中心に素晴らしい「新生」となっており、年末から年始にかけて275時間ほど遊ぶことになった。
目次
ゲーム概要
ストーリーはヴァレリアという島国の民族紛争について描き、衝撃的な選択肢から3つのルートに分かれるのが大きな特徴。ルートによって仲間になるキャラクターも変わってくる。
戦闘では防御力の高いナイトや、後方から魔法で攻撃できるウィザード、回復魔法に秀でたクレリックなどを自由に編成して戦う。プレイする人によって様々なドラマが生まれる懐の深いシステム。WT(ウェイトターン)という特殊なターン制と、立体的なマップで高低差を利用した戦いが繰り広げられるのが特徴。
新生されたバトルデザイン
SFC版の戦闘も一触即発という感じで好きだったが、リボーンでは万人が遊びやすそうな形に丁寧にリメイクされている。運命の輪はよく覚えてない。
AGI至上主義、アーチャー最強伝説の時代は終わりを告げた。ほとんどのクラスや、SFC版では全くお呼びでなかったモンスター系のユニットにも役割がある。例えば、アーチャーの攻撃は前衛には通用しなくなったが、厄介な後衛を狙い撃ちする役割が与えられた。オリジナルでは残念なクラスの代表であったナイトは異常に硬い上に「ランパートフォース」というZOCを発生させて相手の進軍を阻むことができる。ニンジャも最強万能ユニットではなくなったが、状態異常を付与したり、なんか色々できる。AGIで避ける感じから、スケールアップされたHPで耐える形になったのも大きな変更だ。
ユニオンレベル
リボーンではシナリオ進行度によってユニオンレベル(レベル上限)が設定されている。序盤こそユニオンレベル上限までレベリングしておけば有利に戦えるが、中盤以降はユニオンレベルより格上の相手と戦うことになるため、難易度が高い。レベルは演習で簡単に上げることができるため、形骸化しているのは否めなかった。
スキルは4つまで
MHPやMMPアップなどのパッシブスキル、MPを回復する「瞑想」などのオートスキル、次のアクションでドラゴンに4倍のダメージを与える「ドラゴンキラー」などのアクティブスキルの中から、合計で4つまで選んで装備できる。オートスキルは自分のターンが来る度に一定の確率で発動する。一般的なクラスで10種類以上あるスキルから4つは流石に少ないでしょと思っていたが、最後まで遊んでみるとやっぱり少ない。武器学スキルという熟練度システムに1枠使うので、実質3枠である。武器学は必殺技の習得にも関係するので流石に外せない。例えばドラグーンなら武器学・ドラゴンバスター(周囲にドラゴン特攻を与えるオートスキル)・ドラゴンキラー(自身にドラゴン特攻を与えるアクティブスキル)・ドラゴンハート(ドラゴンのダメージカットスキルを解除する)で4枠となり、MHPアップ・挟撃・アンチノックバックなどのスキルを積む余裕はない。まあ、ドラゴンバスターとドラゴンキラーを併用した一撃は非常に気持ち良いので、好きでこういったビルドにしているという感じはある。
挟撃
挟撃は味方が攻撃した時、敵の後ろに別の味方がいると追撃が発生するというもの。挟撃のレベルによって威力が上がっていき、最高レベルでは通常攻撃の150%の威力になる。リボーンでは命中率が基本的に100%で背面を取る価値が低くなったので、代わりに導入されたと考えられる。面白い要素だが、挟撃スキルをセットしないと発生しないため、積めるユニットがほとんど存在しない。スキル枠に余裕があるのは鳥くらいである。ドラゴンですらドラゴンズアイ・スケイル・レゾナンス・属性ブレスと有用なスキルが目白押しであり、挟撃している場合ではない。
魔法とアイテム
魔法とアイテムもそれぞれ4つまで装備できる。SFC版ではアイテムに装備欄を使っていたので、かなり使いづらかった。リボーンでは消耗品を積極的に使っていくのが攻略のポイントとなる。
今作では杖やオートスキルで魔法の射程が伸びるため、SFC版と魔法の使い心地がかなり違う。ロデリックが禁呪で無双した歴史に説得力が与えられた。
ウェイトターン
タクティクスオウガでは敵味方関係なく、WT(ウェイトターン)が回ってきたキャラクターから行動する。SFC版のWTはAGI依存だったが、リボーンでは基礎値+クラス値+装備の合計がWTになった。固有キャラは汎用キャラより基礎値が優れているためターンが早く回ってくる。モンスター系のユニットはアクセサリーしか装備できないため、WTがかなり早い。ステージ開始して最初に動くのがドラゴンとかタコなのは驚くが、そのうち慣れる。
高さのあるマップ
敵の城を攻める時は相手のアーチャーが高所にいて不利であったり、クラスの移動タイプによって進軍ルートが制限されたり、立体的なマップならではの戦略が要求される。高低差を無視し、壁も貫通する魔法は非常に強力。リボーンでは2章から手に入る装備にジャンププラスというスキルがついているため、SFC版と移動できるルートの感覚が異なる。コリタニ城で通路から降りても普通に戻れた(軽歩ユニットで上り2下り3ステップとかなので、降りたら戻れなかった)。
属性相性のウェイトが高い
武器や必殺技にキャラクターのエレメントを合わせると目に見えて強くなる。魔法による耐性低下よりエレメント相性の影響の方が大きいので、エレメントを揃えるよりもバラバラに編成して有利な相手に攻撃を叩き込むのが有効だと感じた。キャラクターのエレメント変更はチャームで気軽にできる。
運命の輪 C.H.A.R.I.O.T.
任意の手番まで戻すことができる。1回の戦闘で使用できる回数に制限はない。基本的にデメリットはないが、チャリオットを使わないでクリアすると報酬が増える戦闘も存在する。
死亡は3ターンの猶予
戦闘不能状態になってから3ターン以内に蘇生すればキャラクターをロストしない(SFC版は1発ロストだった)。蘇生アイテムも序盤から買うことができる。
倍速・真上視点
射程の長い魔法のターゲットを選択する時などに視点変更がかなり便利だった。倍速は慣れると等速がスローモーションに感じる。
装備
武器・盾(両手武器)・頭・身体・腕・脚・アクセサリーの7箇所に装備可能。盾のアドバンテージが低いため、カウンターができる両手武器の方が使い勝手良い印象。オリジナルでは部位問わずアイテム含めて合計で4つまでだった。
バフカード
フィールド上にランダムで出現する「バフカード」を拾うことで、その戦闘中のみキャラクターが強化される。「物理攻撃力アップ」「魔法攻撃力アップ」「オートスキル発動率アップ」「クリティカル率アップ」「MP回復量アップ」が存在し、1キャラに4枚までスタックできる。攻撃力アップ系を2枚以上スタックした時の効果が非常に大きく、ダイナミックに戦況が動く。出現する場所と種類がランダムのため、戦闘の運要素を強くしていると賛否あるが、個人的には進軍に選択肢が増えて面白いと思う。「HP回復」や「防御力アップ」など、敵が取得すると戦闘が停滞しそうな効果がないのも好印象(スキル発動率アップで常時ドラスケファランクスになることはあるが)。
育成・やりこみ要素
ユニオンレベルまでは演習で簡単に上げられるため、真の育成要素は「パラメーターチャーム」と「レリック集め・合成」となる。
ステータスを上げる消費アイテム「パラメーターチャーム」は主にボーナスタスクの達成で獲得できる。シナリオ戦闘でも手に入るが微々たるもので、「死者の宮殿」に潜るようになってからが本番。「レリック」は繰り返し手に入る強力な装備のこと。属性防御などの補正値を合成で強化することができる。
ユニオンレベルは最大で50だが、エンドコンテンツではレベル70以上の敵が出てくるようになる。この差を埋めるのがレリックとパラメーターチャームだ。チャーム3個でレベルアップ1回分くらいのステータスを上げることができるので、全てのステータスを上げるとしたら600個も投入すればレベル70程度の能力になるだろう(遠い)。
死者の宮殿
死者の宮殿は4章終盤から挑戦することができるSFC版からあったエンドコンテンツで、タクオウプレイヤーの実家である。全部で115階層あり、ボーナスタスクでパラメーターチャーム、敵からは様々なレリックがドロップする。1階から潜って全てのタスクをクリアしていった場合、チャームは各種50個ずつくらい持ち帰ることができる。ちなみに僕は大晦日に死者宮に潜り、正月4日目に地上に出てきた。
サンブロンサ遺跡
運命の輪で追加されたエンドコンテンツ。敵術師との禁呪の早撃ち勝負や、初期位置がクッソ近くて1ターン目から後衛に飛びかかってくる鶏などが特徴。ボーナスタスクで合成に使う貴重な素材が手に入るため、できるだけC.H.A.R.I.O.T.を使わず、戦闘不能者も出さずにクリアしたい。後半ドロップする召喚魔法が非常に強力で、戦闘が大きく変わる。
十弐神将
サンブロンサ遺跡をクリアしたら、ボーナスタスクで手に入った素材を合成して十弐神将に挑戦する。こいつらが落とす武器は全てのステータスが10前後上がるため、レベル3つ分くらいの価値がある。両手に装備すれば6つ分だ。開幕に放ってくる必殺技が範囲1000超えのダメージで驚いた。後衛は一気に壊滅である。作戦を練り直し、ドラゴンを囮にしつつ蓋をすることにした。
追加エピソード
PSP版「運命の輪」のDLCで追加されたエピソードが、本編クリア後に4つある。
「歌姫」はカノープスの妹ユーリアが仲間になる話。難易度は低い。
「ウォーレンを捜せ」はいくえ不明となったウォーレンを探して死者の宮殿の更に深部まで行く話。死者の宮殿が非常に長い上に、ウォーレンを救出する戦闘が非常に高難易度で「このジジイは死ぬ運命だよ」と諦めかけた。
「真の騎士」は運命の輪を使って聖騎士ランスロットを救出する。ウォーレンに比べると簡単。ジジイもファランクスしろ。
「十二人の勇者」はオープニング以前の時間軸まで遡り、暗黒騎士団を倒す話。オリジナル版へのアンサーとなっており、熱い展開だった。PSP版「運命の輪」で、このゲームはこんな素晴らしい終わり方をしていたのか!それで、どうしてオウガバトルサーガの続編が出てないんだい?
「十二人の勇者」はトレハンの最終目標にもなっている。8人いるコマンドが全て固有のレリックをドロップし、ボスは条件によってドロップが2種類ある。
攻略
デニムに死者宮2周分のチャームを与え「オウガシリーズ」(ブレード・ヘルム・アーマー)とファイアクレストを装備させて突撃。INTとMNDチャームだけ全振りしたカチュア(ダークプリースト)に「くさいものシリーズ」(ヌメヌメする兜・汗臭い甲冑・むずがゆい篭手)を装備して火力役とした。デニム・カチュア・ヴァイスの3人出撃限定で手に入るレリック版「ブリュンヒルド」を狙う場合は、デニムとカチュアで通路を塞ぎながらヴァイスを逃亡させる(ヴァイスにもチャーム注いだけど、オウガシリーズとファイアクレストがないと攻撃を受けきれなかった)。アンビシオンを狙う場合はデニムとカチュアの二人出撃が楽だった。アンビシオンを1本出すのに半日くらいかかった。
余談
BGMは運命の輪のアレンジを生演奏で再レコーディングしたものと、新曲がいくつかある。運命の輪のアレンジが天才だったので、相変わらず天才。
急にドラクエのNPCみたいになるラヴィニス。この人仲間にするの面倒すぎん?(クレシダほどではないが)
除名メッセージまでフルボイス!でも呪文とかは喋らないので、戦闘中は断末魔のみフルボイスとなる。
レリックが整うまではモンスター系ユニットが活躍した為、ふれあいコーナーが頻繁に発生した。
PSP版では仲間にしたけどレベル上げが面倒で使ってなかったオズマ、同僚に対してレスバトル最強女で面白い。でも一番好きなレスバトルはバンハムーバ神殿のオリビアとシェリーのレスバトル。
総評:名作は新生を経て傑作へ
発表当初はフルボイス化や現行機で遊べることに喜びを感じていたが、実際に遊んでみるとバトルデザインのリメイクが素晴らしかった。語り継がれる名作は丁寧なリメイクを経て、現代でも通じる傑作へと新生した。