常軌を逸した作り込み HD-2D本家の続編『オクトパストラベラー2』レビュー

 『オクトパストラベラー2』はアクワイア & SQEX浅野チームが開発、スクウェア・エニックスが発売したRPGである。「HD-2D」2.0と銘打った、前作より更に進化したドットグラフィックが特徴。

 裏ボスを倒してプラチナトロフィーも獲得して82時間だった。今回は裏ボス倒せたよ!(前作のガルデラは諦めた)

ゲーム概要

 章区切りで8人の主人公のストーリーを追っていく。戦闘はターン制に「ブースト」「ブレイク」といったメリハリを足したもの。主人公毎に異なる「フィールドコマンド」でNPCから情報を引き出したりアイテムを盗んだりできる。

シナリオは賛否両論

さて、知らんな……

 賛否両論といっても観測範囲で賛の人はいなかったが、個人的にもシナリオは雑かなと思った。章立てなのに区切ってる意味が特にないような話が多い。話を終わらせるために雑に暴力で解決しがち。敵も味方もあんまりにも行動がめちゃくちゃなので、法律とか存在しない世界なのかな?と思ったら、契約がどうのって話があったり、裁判所があったりしてびっくりした。なお、裁判官は立場を利用して悪事を働いて被害者に殺されている(サブクエで)。法律はあるけど倫理は存在しないのかもしれんな。

 魔物や魔法が存在するファンタジーの世界で、人間の確執を描く……みたいなのがテーマなのかもしれんけど、章ごとの分量が限られているためか十分に描けていない印象を受けた。以前にも書いたが、ゲームのシナリオはゲームのフォーマットに合わせたものにする必要がある。オーシュットのシナリオは物語の目的とゲーム内容が噛み合っており、優れていたといえる。

 ゲームの仕様といえば、メインシナリオの遊ばせ方にも問題がある。プレイヤーは8人の主人公から1人を選んでそのキャラの1章を最初に体験し、他のキャラクターは仲間にした時に記憶を振り返るみたいな形で1章を体験することになるのだが、レベル1からの1時間程度のストーリーを8人分やらされるのがわりと辛い。あとからでも見ることができますとか言われるが、先送りにするだけでは何の解決にもなっていない。8人分のプロローグを見終わって10時間程度、小規模なゲームならクリアしている頃かもしれないが、オクトラ2は今始まったところだ。もうちょっとなんとかならんかった?

 開発チーム的にはストーリーが売りだと思っているのかもしれないが、割り切ってロマサガみたいなフリーシナリオ+メインの1本化をした方がゲーム性に合っているんじゃないかと思う。キャラクター毎の話も無駄が多いし、もっとコンパクトにしてサブクエとして実装すればいいだろう。というか、主人公は8人も必要ない。「オクトパストラベラー」というタイトルに縛られすぎだ。この辺はスマホ版(大陸の覇者)の方がうまくやっているように見えるが、あちらのシナリオはコンシューマ版より更に最悪である。どうして。

 声優はとても豪華なのでいい感じの演技をしている。子安のキャラとかやりすぎでしょ。オズバルドとハーヴェイは男同士の百合だよ。

非常に優れた戦闘バランス

 敵のシールドを弱点武器で削り、「ブレイク」したら「ブースト」で大ダメージを与えるターン制の戦闘。バフ・デバフの影響も大きく、弱点攻撃・サポート・火力役などを考えて編成するのが楽しい!ブレイクすると次のターンまで敵は行動できないため、タイミングも考えると有利に立ち回れる。敵の弱点は実際にダメージを与えるか「調べる」スキルを使うまでは隠されており、新しい敵との戦闘は毎回緊張感がある。

 今作から「底力」という要素が追加された。アグネアは行動の全体化、ソローネは2回行動化などベースジョブに因んだ効果を発揮し、キャラクター運用を個性的にしている。底力は攻撃や被ダメージで貯まるゲージを消費すると使用可能。

 ベースジョブは見た感じ前作と同じラインナップだが、アビリティは大きく調整が入っている。「底力」も加味して、新しいアビリティの組み合わせを考え強敵に挑むのは楽しかった。雑魚戦でよく使っていたのは「さきがけ」「BPプラス」「いきなり底力MAX」を装備したキャスティの「調合」でBP配布おばさんお母さん。

 キャスティの「調合」以外にも、アグネアの「セッション」ヒカリの「覚えた技」オーシュットの「けしかける」も面白い要素だった。「セッション」は連れ歩いているNPCによって、踊りスキルを使った時の追加効果が変わるというもので、オクトラの既存要素を上手く組み合わせている。
 今作の育成要素は「レベル」と「バトルジョブ」で覚えるアビリティの組み合わせのみでシンプルなため「覚えた技」と「けしかける」に使う魔物を更新するのは良いアクセントになった。

 数字関係のバランスもしっかり取れており、マップに表示された適正レベルで挑むボスはかなりヒリヒリした戦いになる。適正レベルだと初見でなんとか倒せて、弱点を把握してしっかり対策すると、もっと低レベルでも倒せそうな印象。あと、ラスボスも今回は常識的に倒せるレベルだった。

昼夜で切り替わるフィールドコマンド

まだまだだな

 今作の新しい要素として、R2ボタンでいつでも昼夜を切り替えることができる。昼と夜で配置されているNPCが変わったり、フィールドでは出現するモンスターが変わったりする。プレイヤーキャラクターが使えるフィールドコマンドも昼夜で切り替わり、全部で16種類(!)にもなる。

 ただし、大まかな種類としては「NPC連れ歩き」「眠らせる(道を塞いでいるNPCをどかす)」「NPCの持っているアイテムを取得する」「情報収集」の4種類であり、前作と変わっていない。主人公8人も必要なかったんじゃないか。

 オクトラのサブクエストはフィールドコマンドを利用して、連れ歩きで特定のNPCに会わせるなどのユニークなものが多い。連れ歩き系はまだ考える余地があって楽しいが、目の前にいるNPCを(殴ったりして)眠らせるだけのクエストも多めだった。

 前作からあまり進化してないというのはあるが、新しい町に着いた時のフィールドコマンドの楽しさは健在とも言える。話しかけるよりもまずはNPCの持ち物を物色していた。

マップの作り込みに驚愕

 グラフィックの作り込みはもちろんのこと、マップの種類もやたら多く、デザインも素晴らしい。こんなクオリティの高いマップをどうやって量産してるのか謎すぎる。

 また、上記ツイートの動画のように、奥行きを使った表現も素晴らしい。スクリーンショットでは伝わらない良さがあるので、是非プレイして実際に世界を見て回ってほしい。

 マップデザインは素晴らしいが、ダンジョンが狭いのは難点か。上記動画の距離でも2回くらいはエンカウントする。動画では裏ボスを倒すと手に入るシャットアウトリボンを装備しているため、エンカウントしていない。
 かなり序盤から戦闘後にSP回復するアビリティが手に入るため、そもそもダンジョンでリソース管理する遊びは考えられていないのかもしれない。

総評:傑作

 終盤までバランスが取れており、試行錯誤のしがいのある戦闘。美しくゲーム的にも優れたマップデザイン。贅沢に使われるBGMなど、圧倒的な物量が高いクオリティで作り込まれている。シナリオは手放しでは絶賛できないが、サブキャラのエピローグをしっかり語っているなど、丁寧にフォローしようとしている部分もあった。そして何より、ラスボスのBGMが最高だったので全てが最高になった。

 裏ボスに関して後で追記するかも。