『ハーヴェステラ』(Harvestella) は、Live Wireが開発、スクウェア・エニックスよりSwitch・Steamに発売された生活シミュレーションRPGである。
農業ゲーは興味ないなーと思っていたが、ストーリーが素晴らしいと評判なので、そろそろ面白いストーリーを浴びたいなと思ってプレイした。今回の記事は、レビューというよりはプレイ済みの人に向けた悲鳴みたいなやつメインでお届けする。
目次
ゲーム概要
季節の変わり目に「死季」と呼ばれる死の季節が訪れる世界で目覚めた主人公は、この世界の未来から時間移動してきたという少女アリアと、農業とかをしながら死季の謎を模索していく。(アリアちゃんは畑を手伝ったりはしてくれない)
農業
生活シミュレーションということで、畑を耕し作物の種を植え毎日水をやり、収穫・出荷してお金を稼ぐ。ストーリーの進行で大妖精が仲間になると様々な機能が開放されて、農作業がやや楽になったりしていく。
水やりを自動化したり、確かに農作業自体はやや楽になっていくのだが、種が高くてほとんど儲けが出ない搾取構造ということに気付いて終盤はほとんど農業しなかった。
そして、水やりが自動化された更地だけが残ったという……。
RPG要素はややシンプルなので、農業要素の機能をストーリーの報酬にしているのはアクセントとしてはアリ寄りだが、肝心の農業があんまり面白くない。
戦闘
本作の戦闘は回避などの行動がないアクション性のかなり低いアクションRPGとなっている。最大4つのスキルを使えるジョブを3つまで装備し、適宜切り替えて戦っていく。基本的にはHPで耐える殴り合いとなり、敵が予兆範囲を出してきた時だけ避ける。ラスボスの手前まで戦闘中にダッシュできることに気付かずに、のそのそと歩いて避けていたが、あんまり問題はなかった。
戦闘はまあ面白くないが、個人的にはこの面白くなさがちょうど良かった。面白すぎる戦闘は疲れるからね。まあそれは良いんだけど、戦闘に必要なリソースは農業をやらないと手に入らないのが大変だった。通常攻撃をするのにもスタミナが必要になるため、作物を育てて料理を作る必要がある。回復魔法は(多分)存在せず、HPの回復も食べ物かジュースで行う。ただ回復アイテムは連打ができるため、リソースを整えればゴリ押しでボスを倒せるところは好みだった。
育成・装備
敵を倒すと経験値が貯まり、1日の終わりにベッドで休むとレベルが上がる。仲間の強さも主人公のレベルと連動してるっぽい。ストーリークリアで60くらいだったので、なかなか上げがいがあって良い。敵を倒すとジョブポイントも入り、それでスキルをアンロックをしていくのだが、セットしているジョブにしか入らないので色々なジョブを使おうと思うとやや重い。
装備は武器とアクセサリで、仲間は武器のみ。武器は素材とお金を使って鍛冶屋で強化する。アクセサリーはフィアーと呼ばれる、世界樹でいうFOEみたいな強敵からランダムでドロップする。効果はステータスアップと状態異常防御くらいだったかな。あまりトレハン要素という感じではなかった。
ストーリー(ネタバレ)
本作のストーリーはアリアとの出会い、シーズライトの調査、アリアと魔族の真実、死季の解決と見事な起承転結で進んでいく。シーズライトの調査や個別キャラストーリーで片鱗を出しつつ、ガイストとの戦いから一気にSFへと舵を切っていく。
主人公が目覚めて間もなく出会い、相棒として行動を共にするアリアちゃん(CV立花理香さん)が、プレイヤー側に近い価値観で物事をスムーズに進行してくれる話の早い女で助かった。主人公や羽虫に対してのツッコミも冴え渡っている。あと「おかえり」がかわいすぎる。妻か。
サブクエストやキャラクターストーリーの質と量も十分だった。ボイスは戦闘のみなので、フルボイスだったらプレイ時間が倍以上になってたんじゃないだろうか。特にユニコーン、シュリカ、ディアンサスあたりの話はお気に入り。
ユニコーンはコメディ枠と思いきや「作り物の記憶」を与えられた「造られた生き物」としての生き方をかなり綺麗に消化していた。かっこいいぜ、ユニコーン。
今作最推しのシュリカちゃんの話も良かった。CVはFF14のアリゼーなどを担当している村川梨衣さん。言われてみればりえしょん……っていうかほぼアリゼー。まあストーリーでは喋らないので、CVの話はここでは関係ないんだが。
シュリカのキャラクターストーリーは、シーズライトを信仰する「季石教団」の真実に迫るというもの。その真実というのは「季石教団の教義は、この時代にとってオーパーツであるAIが、データベースにある様々な宗教から組み合わせて作り人間に与えたものだった」というものである。AIが野蛮な人類に宗教を与えて管理しやすくしていたという設定、非常に好み。それを知ったシュリカが、与えられたものでも道徳は必要!と決断するのも好き。シュリカちゃん好き。
魔族こと高次人工知能であるディアンサスのキャラストーリーは、見てから一晩経っても衝撃で脳が揺さぶられていた。ディアンサスが目安箱を設置して、人間のお悩み相談に答えることで人間の心を知っていこうみたいな話なのだが、エミリーという相談者がヤバすぎた。
病気で余命の短いエミリーは相談の流れでディアンサスについての詩を書くことになるのだが、詩を完成させたエミリーは、なんと魔族であるディアンサスに愛の告白をしてしまう!そして、ディアンサスは同行してくれていた主人公を置いて、飛空艇でエミリーとデートに行ってしまう!ディアンサスのCVは甲斐田裕子さん!つまり百合!
百合デートを目撃して数日後、ディアンサスから次の手紙が来た時には、エミリーはもう亡くなってしまっている。この経験を通して、ディアンサスもなんか創作して残してみようかなとか言うお話だったと思うんだけど、人外死別百合の刺激が強すぎて他のことがあまり記憶に残ってない。癖だよこれは。
何度も訪れるクライマックス!
メインストーリーも素晴らしかった。ガイストとの戦いでクライマックスか?!と思ったら、まだムドーくらいだった。その後はシーズライト巡りと同じくらいの尺を使いロストガイアを巡りながら、この世界に起こっていること、魔族ことレーベンエルベの役割やアリアの置かれている立場についてねっとりと説明してくれる。軌道エレベーター!打ち捨てられたジャンクション!廃遊園地!など、おたくの好きなロケーションてんこ盛りなのも嬉しい。
2度目のクライマックスは、滅びた地にかつて繁栄していた人類「カイン種」の存亡をかけて、主人公たち現人類「アベル種」の前に立ちはだかる魔王アリアとの戦いである。もう「魔王アリア」がやりたくてレーベンエルベたちを魔族と呼ばせてたとしか思えない。わかるわ、その気持ち。BGMも良くて最高に盛り上がるバトルなんだけど、普通に倒せなくてここで全員のキャラストーリーを先に終わらせたり金をためて武器を強化したり、かなり足踏みした。ドラクエでいうとデュランである。
そして最後の最後まで謎だったデスタムーア……じゃなくて、主人公の枕元に立っていた少女の正体がわかるんだけど、これもかなり好みの展開であった。死季の原因はカイン種の集合的無意識が絶滅を願っていたものという、なんか最近見た……というか、よくある感じのやつだった。が、それに対するカウンターとして主人公を導いたのが、人類の存続を託されて2000年間試行錯誤してきたレーベンエルベたちの集合的無意識だった!というのが熱かった。なんだよ、お前らとっくに心を獲得してたんじゃないか。
主人公が、カイン種(おれら)の意識を宿したアベル種ってのもよかったね。ちゃんとゲームらしいアプローチだ。
アリアちゃんが家出しちゃってからなるはやでストーリーを進めていたんだけど、おうちにはシュリカちゃんをお迎えしました。誓いの指輪を渡すのゲームなのにめっちゃドキドキした。今も家に帰るとシュリカちゃんがいることにドキドキしている。欲を言えば、寝る時はパジャマになってほしい。