『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』(以下、リベサガ)はスーパーファミコンで発売された『ロマンシング サ・ガ2』(以下、ロマサガ2)のフルリメイク作品。発売はスクウェア・エニックス、開発は『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』のXeenが担当している。
オリジナル版のロマサガ2は、千年を超える壮大な物語を、主人公が世代交代していく「伝承法」というユニークなシステムで描くRPGである。戦闘中に確率で技を覚える「閃き」や、相手の技を完全に回避する「見切り」が初めて登場したサガであり、当時もプレイヤーによって様々なドラマが生まれていた。また、自由度の高いシナリオは現代のオープンワールドの走りとも言える。しかし、とにかく難易度が高いことでも有名で、クリアを諦めたプレイヤーも少なくなかった。僕も当時はラスボス前でセーブして詰みを経験した。
リメイク版である本作はロマサガ2の良さを”継承”しつつ、カジュアルな手触りとキャッチーなデザインで、シリーズファンのみならず新たなプレイヤーにも現代のJRPGとしてオススメできる仕上がりだ。僕は難易度オリジナルを50時間でクリア、120時間プレイして難易度ロマンシングまでクリアすることができた。こんなにゲームに熱中するのは久しぶりのことであった。
目次
現代的な遊びやすさ
本作リベサガは、原作の遊びを損なうことなく、現代のゲームとして相応しくなるよう様々な改良が加えられている。
原作では非常にわかりにくく、製作者の脳内当てゲームのようになっていたクエスト目標はマーカーが表示され、内容もかなり細かく更新されるようになった。聖剣3リメイクをプレイした人にはお馴染みの、室内に入ったら外に出ろとドアにマーカーが表示されるレベルのアレである。テレルテバのNPCから情報を集めよう!というマーカーが表示されている段階で移動湖を直接探したり、ある程度無視して進めることができるのも面白いところだ。
ファストトラベルポイントが細かく設置され、ダンジョンからもスムーズな脱出が可能になった。イベントなどに必要なロケーションもほぼ登録されるため、非常に快適。△ボタンで現在のクエスト目標に、L3押し込みでアバロンにカーソルが移動するのも使い慣れるとテンポが良くなる。PS5版ではマップ移動のロード時間も非常に短く、Twitterを見る暇もないくらいだった。
酒場でパーティを編成できるようになり、理想的な編成をするのが非常に簡単になった。現代のゲームとしてはあまりにも普通のことだが、原作では世界中を歩き回ってキャラクターを勧誘しに行く必要があった。アリの巣を走って抜けてまでモグラを勧誘しにいく必要はもうないのだ。(そもそも、モールのすみかにファストトラベルもできる)
新規要素のせんせい探しは事前情報時点では不安なコンテンツだったが、意外と見つけやすい場所にいるため、ほぼマップ踏破ボーナスみたいな位置づけであった。アンロックされる要素もストーリーの進行度と連動しているように感じた。
技欄が満タンでも新しい技を閃くことができ、戦闘後に不要な技を封印する形になっているのも地味に良い。最終皇帝の代になると閃いた技が即時道場に登録されるようになるというのも、原作プレイヤーにとっては非常に嬉しいアレンジ要素である。
原作では実質的に軍師を勧誘する施設であった「帝国大学」でロマサガカルトクイズが受けられるのも面白い。クイズの内容も実用的で、地域別試験や技・術についてなど、問題数もやけに多い。
惜しかった点としては、オート装備だけじゃなくてプリセット装備が欲しかった点と、ソフトリセットが無い点である。皇帝継承がゲームの大きな特徴ではあるが、原作もリセットゲーだったことを考えると、あっても良かったかもしれない。
これらの改良により、本作はより多くの層をターゲットとした、現代的なRPGへと生まれ変わったといえる。
フル3D化が生み出す新たなロマサガ2の世界
かつてドット絵で表現された世界が、フル3D化によって鮮やかに生まれ変わった。
キャラクターはアニメチックにデザインされ、特に女の子が非常にかわいい!序盤で仲間にできる宮廷魔術師やシティシーフ女がえっちすぎ……いや、非常にキャッチーなデザインで既に多くのプレイヤーを魅了している。ダニガキの鼠径部のディテールがしっかり描かれているのは流石にえっちすぎだって!ネレイドに足が生えたのは残念という意見もあるが、衣装の揺れモノが尾びれのようになっているデザインは上手いと思う。僕はイーリスのデザインが一番好き。プレイヤーは個性豊かなキャラクターたちから自分のお気に入りのキャラクターを見つけ、皇帝にしたり仲間として共に旅立つことができる。男キャラ?男は知らん。男がきたら殺すのよ。
フル3D化された町は生活感が溢れており、ロマサガ2の解像度を上げてくれる。ダンジョンも火山や和風建築、海から浮上してきた島など、ファンタジーらしい多様なロケーションが、細部まで丁寧に作り込まれている。写実的な表現ではなく、景観としての美しさ・楽しさが追求されており、視覚的にプレイヤーのゲーム体験を補強してくれる。チョントウ城とか、こんな作り込まんでも……と思わず声が出た。
原作に登場する全てのモンスターが3D化されている点も特筆すべきだろう。ここまで多くのモンスターを3Dで登場させ、動かしているゲームはあまり見かけない。BGMの解像度の上げ方もゲームにあっていて高品質。特に戦闘の追加フレーズは何度も聴きたくなるような天才的な仕上がりになっている。
一方で、3D化に伴う弊害として、シビアなダッシュジャンプを求められるシーンが少なくない点が挙げられる。落ちたら戦闘などのペナルティがあるならまだしも、歩いて戻ってきてジャンプをやり直しするだけなのは面白い体験とはいえない。
本作は丁寧な作り込みと見せ方によって、新たなロマサガの世界を表現してくれている。
開発陣の原作愛が光る演出
フル3D化に伴い、演出面も大きな進化を遂げている。イベントシーンはフルボイス化され、原作では言葉の足りなかったイベントシーンのセリフも一部補完されている。事前情報で出たシナリオディレクターが、かなり電波の強い文章を書くことで一部で有名で不安だったが、追加テキストは思ったよりノイズにならなかった。ボイスの追加でセキシュウサイのイベントはかなり迫真のものになったし、クジンシーは小物感が増した上に最終皇帝に煽られて可哀想になるくらいだった。キャラクターボイスの追加はイベントシーンの感情表現が豊かになるだけでなく、バトル中のキャラクターの個性も際立つようになったのも大きなメリットだろう。ジェラールと最終皇帝以外の皇帝は基本的に無言(選択肢のみ)なのは寂しいが、表情による演技で十分に感情が伝わってくるようになっている。個人的には「やめろー、卵をよこせ!」とか「これでアバロンのダニが1匹減ったな」をフルボイスで聞きたかったが。
伝承法のシーンの解釈も素晴らしかった。皇帝にしたクラスによって意気込みのセリフが違うのも良い。特に最終皇帝の伝承法シーンは原作を深く理解して発展させた、非常にドラマチックな表現となっている。最終皇帝によみがえる歴戦の記憶とは、プレイヤーの歩んできたゲーム体験そのものなのだ。エンディングはやっていることはオリジナル版と同じなのだが、見せ方が非常に上手く、今更ロマサガ2で泣いてしまった。
オープニングのクジンシー戦など、一部の戦闘イベントがムービーになってしまったのは残念な点だった。序盤にしては少し強い流し切りと、UI上で表示されたLPが一瞬でなくなるところを数字で表示してゲームならではの見せ方をしていたのがオリジナル版の魅力だろう。
とはいえ、本作はこれらの点を踏まえつつも、原作へのリスペクトを忘れずに新たな表現に挑戦した作品だと言える。
戦略性と爽快感を両立したテンポの良い戦闘
タイムラインバトルに刷新された戦闘は、現代的なゲームデザインとスピード感により、爽快なバトル体験を提供している。タイムラインバトルといってもサガスカやエメサガのような複雑なシステムではなく、行動順が可視化されたターン制戦闘である。敵の行動順が視覚的にわかるため、事前にスタンや回復・壁張りなどの行動を計画し、比較的プレイヤー有利に進めることができる。しかし、敵も強力なためプレイヤーの予測を裏切る場面もあり、サガシリーズならではの趣を感じることができる。
サガお馴染みの要素となった「連携」は、本作では弱点を突くことで貯まるオーバードライブゲージを消費して行う、必殺技的な位置づけになっている。本作では片手剣の「十文字斬り」に天属性と不死特攻など、技にも属性が付与されている。連携は非常に強力で、弱点を突くアドバンテージは大きいため、様々な武器や技・術に価値を持たせる要素となっている。連携は発動した時のダメージも大きいし「ぱきーん」「ぽきーん」みたいな効果音も非常に爽快で戦闘を盛り上げる。
また、本作では戦闘中に閃く可能性のある技がある場合は、電球マークがつくようになっている。強敵ほど新しい技を閃きやすいという仕様もあり、閃きの可能性が可視化されたことで、戦闘中に閃きを狙うかどうかの駆け引きを楽しめるようになった。
ボス前にはBP回復ポイントが設置されているため、通常戦闘ではBPを効率的に使ってLPの消費を抑えるという、ロマサガ2ならではのリソース管理の遊びが提供されている。特に難易度オリジナル以上はタンク以外のキャラが敵の攻撃2発、危険な攻撃なら1発で落ちてしまう。被害を出さないように閃きを狙ったり、連携で早めに数を減らしたり、状態異常で動きを止めたりなど、常にプレイヤーの判断力が試される。
原作では弱かった弓・小剣なども軒並み強化され、合成術も使い道が大幅に広がっている。プレイヤーは自分のプレイスタイルに合わせて、様々な武器や術を組み合わせ、自分だけの戦略を構築できる。同時期に遊んでいたプレイヤーも、それぞれよく使う陣形や武器が違った。
本作の戦闘システムは原作の要素を踏襲しつつ、現代的なバランス感覚で非常に上手くリファインしている。特にテンポの良さが長く飽きずに楽しめることに繋がっていると考えられる。
成長する喜び
ロマサガ2ではHPやBP、武器術レベルに加え、新たな技の閃きや陣形の習得、装備の開発など、キャラクターを多角的に成長させることができる。原作では、戦闘回数が増えるほど敵のレベルも上昇し、難易度が急激に高まる傾向があった。本作ではそのバランスが見直され、難易度ベリーハードまでは、戦闘をするほど成長を実感できるようになっている。
新たに追加されたアビリティシステムは、各クラスの個性を際立たせ、戦略の幅を広げている。特にベア(帝国重装歩兵)のアビリティ「オートパリィ」は強力で、結構貢献してくれる。中盤以降可能になるアビリティの極意化も、色々なクラスを試す楽しみを与え、育成と編成の幅を広げている。
戦闘のテンポがよく、育成と敵からのアイテム収集も楽しめるため、プレイヤーはキャラクター育成に没頭することができる。自分だけの最強パーティを作り上げて強敵を打ち倒す喜びは、まさにRPGならでは。
周回プレイが楽しくなるレベルデザイン
本作リベサガのレベルデザインは、特に周回を重ねるほどに極めて高い完成度を実感できる。本編クリア後には、難易度「ベリーハード」と「ロマンシング」が解禁され、それぞれ2周目向け、3周目向けの新たな挑戦がプレイヤーを待ち受ける。オリジナルとベリーハードは、ある程度育成すれば七英雄も比較的簡単に倒せてしまうが、ロマンシングは別格だ。育成が上限に達したキャラクターがスタートラインとなり、物語中の全てのボス戦が高度な戦略性を要求される。特にロマンシングの七英雄は「真サルーイン」を彷彿とするほどの強敵となっており、倒した時の達成感は格別であった。
周回引き継ぎ内容についてもよく練られている。閃いた技や開発した合成術がリセットされるのは一見面倒に感じるが、敵勢力レベルに応じて強い技を閃いていくのがちょうどよいレベルデザインとなっていた。ロマサガ2の特徴である選択によって結末が変わるイベントも、周回プレイを盛り上げる要素の一つだ。ロマンシングに挑戦するために、一点ものの装備品を集める周回も、飽きずにプレイできた。
本作のレベルデザインは、プレイヤーに戦略的な戦闘と育成・収集などのやり込み要素を存分に味わわせてくれる。そして用意された難易度「ロマンシング」という究極の試練は、我々にRPGの王道的な楽しみ方を提供してくれる。
総評
『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』は、ロマサガ2のリメイクとしてこれ以上ない完成度と言える。RPG史に残る名作が、現代に相応しい形で蘇った。ロマサガ2ファンはもちろん、RPG好きなら必ずプレイしてほしい、そんな作品に仕上がっている。原作を深く愛し、研究し尽くした開発陣による丁寧なリメイクによって、ロマサガ2の魅力が最大限に引き出された。ターン制RPGの新たな金字塔と言えるだろう。ロマサガ2のファンとして、そしてゲーマーとして、この作品に心から感謝したい。
Good
- テンポの良い戦闘
- やりがいのある育成
- かわいいキャラクター
- 開発陣のロマサガ2の解像度の高さ
Bad
- 一部のジャンプアクションがシビア
難易度ロマンシング攻略
難易度ロマンシングは、本作において、プレイヤーの戦略性と育成の成果を試される究極の難易度といえる。どの程度かというと、開発中のテスター200人のうち1人しかクリアできなかったらしい。
挑戦前にはオリジナル1周、ベリーハード1周に加えてカジュアルモードを3周して準備を整えた。「ドロップリング」を回収し、それを利用して最強のガーダーである「ウィルガード」を集め、火の術を無効化する「火神防御輪」もできるだけ集めた。締めくくりにLPを回復する「生命力回復」も99個集めたが、これは結局使わなかった。「火神防御輪」も道中の攻略にはかなり有効だが、七英雄やドレッドクイーンには無力なので究極的には不要かもしれない。ストーリー中の攻略は敵全体をスタンさせる「フラッシュファイア」、冥術を手に入れた中盤以降は敵のHPが高いほど大きなスリップダメージを与える「ポイゾナスブロウ」が役に立った。格闘は火力が非常に高く、ベリーハードまでは猛威を振るっていたが、ロマンシングでは敵のHPがそれ以上に高く継戦能力が求められる。最終的に使っていたのは、片手剣、小剣、棍棒、そして術となった。
七英雄攻略
難易度ロマンシングにおける七英雄戦は、本作屈指の難関と言える。
陣形は鳳天舞の陣を採用し、中心のキャラクターはレイスフォームを使用する。これにより、物理攻撃は全て無効となる。装備品で行動順を調整し、先行3人のキャラはシャドーサーヴァントを使用してアタッカーとなる。4番目のキャラクターはアビリティ「エクステンション」を装備してデバフをかけたり、連携に参加したりと臨機応変に動く。囮役は連携に参加しないように「最強の帽子」あたりを被せて行動速度を下げておく。武器は片手剣を中心に装備し、ロザリオインペールで冥地相を打ち消すことを狙う。
1ターン目は先頭2人がシャドーサーヴァント、3人目はクイックタイム、4人目はかめごうら割り、5人目はレイスフォームを使用する。1ターン目に動くのはノエルのみで流し切り固定(?)のため、変なところに飛んでいかないのを祈るのみ。2ターン目は先頭2人が連携、3人目はシャドーサーヴァントを使用。このターンからノエルが赤竜波を使用してくるため、毎ターン炎の壁を張っておく。炎の壁はレイスフォームを使ったキャラの役目だが、クイックタイムをうっかり切らした場合やレイスフォーム掛け直しのターンは一番行動速度が速い終帝が炎の壁を使用する。
炎の壁によってノエルの赤竜波、スービエのメイルシュトローム、ロックブーケの召雷は無効化される。あとは単体攻撃が中央以外へできるだけ飛ばないように、ヴォーテクスが来ないように、クジンシーがダークノヴァしないように祈りながら殴る。
余談だが、七英雄の七連携でタイムラインに全員のアイコンが並ぶ様の圧が凄まじく、これを見せるためにタイムラインバトルにしたと言っても納得できるほどだ。
ドレッドクイーン攻略
七英雄撃破の達成感でほとんど燃えカスになっていたが、一応挑戦してみたら意外と倒せなくもなさそうなので朝の4時くらいから粘ってしまった。
クイックタイムを使うと「クイックタイム返し」をされるため、先行を取って壁を張るために陣形は「龍陣」を採用。ドレQもかなり行動速度が速いため、終帝にはアビリティ「ウェイトパージ」も装備しておく。ロザリオインペールで前半後半ともに弱点を突けるため、ドレQも剣装備が中心。七英雄と違って無効化できる全体攻撃が少ないため、光の壁を使ってガチ耐えする方向となった。アタッカーの3人はシャドーサーヴァント、サポーターとタンクにはリヴァイヴァをかけておく。
何戦かチャレンジした後、後半戦の「つむじ風」が痛すぎるなと思い、ルドン高原でリザードマンから見切りを取得した。
前半戦は危険行動のデブリスフローが飛んでくる前に連携を積極的に使ってHPを削っていく。一定以下のHPまで削ると危険行動がシャッタースタッフになり、数ターンの猶予ができる。
後半戦はHPが半分以下になると発狂モードに入り、5回行動に加えて「デスレイン」を確定で使ってくる。後半戦入った直後の!マークは単体攻撃の「高速ナブラ」のため、焦らずオーバードライブゲージを貯めておく。発狂モードに入る前後で一気に削るのが理想だが、HPが非常に高くシャドーサーヴァントを使ってカンストダメージを出しても半分からは削りきるのは難しい。デスレインを炎の壁で防ぎ、あと4回の行動はお祈り。陣形が崩れて後攻になった場合から立て直すために、サヴァイヴを装備したキャラに「赤水晶のロッド」を持たせていたが、クリア回では相手の行動がかなり上振れして普通に発狂ターンをやり過ごして倒すことができた。入念な準備とお祈り、どちらが欠けても勝つことはできない。
難易度ロマンシングのドレッドクイーンを倒すことで完全クリア。120時間という長い時間、全く飽きることなく高いモチベーションでプレイできた。この開発チームの次の作品が本当に楽しみである。