『グランブルーファンタジー リリンク』は、大阪サイゲームスが開発、サイゲームスが発売したPS/Steam向けアクションRPGである。
本作は2016年に制作が発表され、当初はプラチナゲームズが開発を担当していたが、2019年に共同開発を終了。以後はサイゲームス単独で開発を行うことになったが、その時点で出た記事ではまだゲームエンジンを作っていて、ファンを(僕を)不安にさせた。
そして、開発発表から8年……満を持してリリースされた本作は、期待を上回る面白さだった!ストーリーはエンディングまで15時間程度、クリア後は最大4人プレイ可能のモンハン的なクエストをこなしていく。アクションの手触りや育成要素の作り込みが非常に遊びがいがあり、モンハンになってから150時間ほど追加で遊んだ。
ちなみにスマホ(ブラウザ)のグラブル本編は、ハマりすぎて生活が壊れてしまう(しまった)ので、6年くらい前にやめた。……6年?!???
目次
見せたいモノの詰まったストーリー
本作のシナリオは、本編とは別の地域「ゼーガ・グランデ空域」で展開される。プロバハの暴走で「辺境の街フォルカ」に不時着した主人公たちは、地元で「星神」と呼ばれている星晶獣の暴走を調査したり、謎の武装集団「アヴィア教団」とやりあったりする。だいたい本編のイベントシナリオみたいなノリだが、演出が豪華で進行もテンポがよく、戦闘にもほどよくアクセントがあって最後まで飽きずに楽しめた。特に、ラストバトルみたいな戦闘は3回くらいあり、ラストバトルでやりたい演出を全部詰め込んだ感があった。
ストーリーの時系列は僕がやっていた頃よりも先らしく(まあプレイしていたのは6年前なので……)カタリナ姐さんがスタンド使いになっていたりした。こんな能力者だっけ?メインストーリーのメンバーは最初に軽く紹介されるし、各プレイアブルキャラクターはフェイトエピソードを任意のタイミングで読めるので初見のプレイヤーでも(多分)大丈夫。
サブクエストは非常に簡素。短い依頼文が表示され、内容もアイテムを集めてくるものか、特定のモンスターを倒すのみだ。例外としてカニを集めるクエストもあるが、段階的に報酬が用意されているだけで物語は特にない(全部は集めてないので集めるとあるかもしれないが……)。サブクエストは物語を提供するものではなく、戦闘をこなした際の追加報酬くらいに認識しておけば問題ない。UI的には報告NPCまでワープできるのは良いが、ミニマップがないので受注が困難。というか特にストーリーがないので、報告はメニューから直接でもよかったのでは?
『グラブル』の世界観を美しく表現
グラフィックに関しては、セルルック3DCGに適度にハッチングを入れてグラブル絵の雰囲気に近づけている印象。グラブル絵の3D化は大変だったと思うが、かなり違和感なくキャラクターが動いていて、モーションのバリエーションも非常に豪華だ。全体的にマップが明るいのもよかった。街の作り込みも「街作ったなぁ」という高い品質だが、複雑に作り込みすぎて迷うのでミニマップが欲しかった。
ダンジョンはストーリーで1回通ったらおしまいの割にはちゃんと作ってある……って感想で終わればよかったんだが、ミニマップがないのに探索要素があるのがよくなかった。マップに宝箱・スライム・カニが設置されており、ストーリークリア後にチャプターセレクトで集めた数/設置されている数を確認できる。攻略情報を見ずにかなりしっかり探して半分くらいしか見つからなくて絶望した。ドラクエ11のボウガンアドベンチャーのようなしょうもなさを感じる。トロフィーのツイッター連携がなくなったし、トロコンは諦めることにした。探索は不便なだけで面白くない。キャラクターに探索用のスキルとかもないし。
ユーザーフレンドリーなアクション
戦闘は通常攻撃(□)と特殊攻撃(△)、および通常攻撃の何段目から特殊攻撃に派生するかで変化するコンボ(だいたいのキャラに□△△、□□△△、□□□△△派生が存在する)と、8~15種類の中から4つセットできるクールタイム制のアビリティを使い分けて行う。キャラクターによっては特殊なゲージなどを管理しながら戦うこともあり、どのキャラクターも個性的だ。敵の攻撃は防御・回避・ジャンプなどで対応していく。クエストの難易度が上がると即死するようになったりしてシビアに感じるが、防御と回避が高性能なので慣れると結構なんとかなる。モンハンっぽい感じだが、攻撃モーション中にいつでも回避でキャンセルできたり、なんなら攻撃しながら防御ボタンを押しておけばモーション中に攻撃を受けた時に防御が発動する。優しい。敵の攻撃は予兆範囲が二重に出て、内側の範囲が外周に達するタイミングで回避すればOKというのも、わかりやすくて良い。もちろんモーションや弾道など見た目で判断するべき攻撃もある(が、そういうのはだいたいガードしておけばいい)。
※ボタンはPS基準
全キャラクター共通で攻撃したりダメージを受けたりするとゲージが溜まり、100%になると奥義を撃つことができる。そして、続けて二人以上で奥義を撃つとチェインバーストが発生し、追加ダメージを与える。本編でもおなじみの要素だ。ただ、本編での奥義やチェインバーストというと、演出が長いからブラウザをリロードしたり、なんなら撃たずに通常攻撃した方がダメージレースにおいて有利だったりした(僕がグラブルで嫌いだったところである)。しかし、アクションであるリリンクでは奥義演出中に相手を拘束できるのが大きなメリットとなり、逆に演出時間の長いキャラクターの方がお得である。演出中に他のキャラクター(プレイヤー)が動けなかったら微妙な感じだったが、ここはうまくアレンジしたなと感じる。敵を拘束できるメリットが非常に大きいので、二人ずつ奥義を繋げる2-2チェインや、誰も奥義を繋げない1-1-1-1チェイン(もうそれチェインじゃなくねえかぁ?)などの独自のテクニックも生まれて面白い。
攻撃で相手のスタン値をフルにすると発動するリンクアタックも本作の特徴である。スタン状態になった敵の周囲で◯ボタンで発動し、かなり大きなダメージを与え、フェリのペットが補充されたりイオの魔力の渦レベルが上昇したり、お得な要素が目白押し。何度かリンクアタックをしてリンクカウンターを稼ぎ、100%の状態で全員がリンクアタックを成功させると「リンクタイム」に突入。敵がスロー状態になりアビリティのリキャストが大幅に短縮され、大きく相手のHPを削るチャンスとなる。チェインバーストとリンクタイムを駆使して一気にダメージを与えるのがリリンクの醍醐味となる。
本編と同じように、敵に一定のダメージを与えるとオーバードライブモードという怒り状態になり、攻撃パターンが変化する。その際に「バーストモード」という本作独自のモードになると、こちらが与えられるダメージが大きく下がり、敵の攻撃を避けて凌ぐフェーズになる。避けフェーズは面白くない……と思っていたが、本作ではタイミングよく奥義などで拘束して相手のHPを大きく減らすと、オーバードライブモードや特定HPで発生する行動をスキップすることができる!よくこの手のHP割合トリガー行動のあるゲームだと「50%になったらそれ以上HPが減らなくなって強制的に履行技」とかになりがちなのだが、リリンクは細かくトリガー行動のあるボスでも半分以上のギミックを無視して倒すことができる。もちろん、パーティの火力が高かったり連携がうまくいった時に限るため、キャラの育成やプレイスキル向上のモチベーションとなった。
ボスの攻略方法も特徴をうまく作っており、普段は姿を消していて攻撃のチャンスが少ないアンラマンユなども、何度か攻略しているとチャンスの作り方を理解してきて面白かった。まあでもグリフォンは今なおクソボスだと思う。古戦場の度にクソボスがトレンドに入るくらいなので、クソボスもグラブルの賑わいとも言えるだろう。にぎやか。
アクション面は概ね快適だが、ロックオンが使いづらいのがやや気になった。ドラゴン系のボスで頭にロックオンすると敵のダメージモーションでカメラが大きく揺れたり、ボスをロックオンしたいのに雑魚がたくさんいるとなかなかロックオンできないのが不便(雑魚にはロックオンできなくても、よくありませんこと?)。ロックオンしなくても攻撃の方向はかなり補正がかかるため、最終的にはロックオンなしでプレイしていた。ただ、ロックオンすると投げ物や地面指定スキルがホーミングするのはかなり良かった。
キャラクターコンテンツとして最高の作り込み
キャラクターはメインでフェリ、究極武器を完成させてから少しカリオストロを使ってみた。フェリちゃんはペットの数を管理しながら鞭でぺちぺちする中距離アタッカー。□長押ししているとずっと通常攻撃しているのが楽で、チャージ強化のジーンなどを装備して運用していたが、インターネットで立ち回りを調べてみると通常攻撃は非常に火力が低いことが判明した。フェリちゃんの真骨頂はジャンプ打ち上げ→落下攻撃の繰り返しにあり、ぴょんぴょん!していると高いDPSと奥義ゲージ回収率を両立するのだ。戦い方を覚えたらエンドコンテンツの野良マルチでガンガン奥義始動できて楽しかった。
カリオストロは美少女アタック!の回数を稼ぐアビリティアタッカーという感じで、かなり使いやすかった。□△で槍、□□△でハサミ?□□□△でギア、□□□□△でハンマーコンボに繋がる。長いコンボほど威力が高いらしいが、当たり判定がデカい敵に槍が多段ヒットするため、短くてアビリティも挟みやすい槍を多用していた。リンクアタックが自分の黄金像なのもかわいい。ちゅどーん。
キャラクターの仕草やボイス、掛け合いの豊富さも本作の特徴だ。チェインバーストやリンクアタックではキャラクター毎に違う呼び方やセリフが用意されており、キャラクター同士の関係性もうかがい知ることができる。星晶獣狩りを専門とする「組織」に属する赤い姉ちゃんことゼタが、ちっこい種族であるハーヴィンの騎士シャルロッテを「シャル姉!」と呼ぶことが判明し、全空に衝撃が走った。
やりがいのある育成要素
次は育成について。本作では概ねストーリー中にレベルとスキルツリーを育成し、クリア後は特別な武器の覚醒と、最大12枠装備できるアクセサリーである「ジーン」の収拾・強化を行っていく。レベルはカンスト後、一定の経験値が貯まる度に「よろず屋おたのしみ券(ガチャ券)」とスキルポイントを貰えるのがグッド。スキルツリーは基本アクションの強化やジーン枠の拡張などわりとユニークな機能強化があって埋めていくのが楽しいが、スキルポイントがカンストして使ったことない仲間のスキルツリーを埋めるとかやり始めると、一気に埋められないのがやや気になった。
そして、クリア後のメインとなるのが「覚醒武器」と「究極武器」の強化である。他の武器は作成してレベル上限を150にすれば終わりだが、上記2本の特別な武器はそこがスタート。更に10段階の強化をしていくことになる。うわぁ、急にグラブルになるな!様々なボス素材の他に「銀天の輝き」という共通素材を大量に要求されるため、誰かと一緒に遊んでいる時にどのクエストをやっても銀天が手に入ったら嬉しい!という調整でマルチプレイの価値を高めていた。
しょうもないスクショしかなかった……
ジーンもかなり面白いカスタマイズ要素でよかった。ジーンには攻撃力や体力などの基礎能力系、渾身(HPが最大に近いほどダメージアップ)やアビリティダメージなどの攻撃系、守護や回避性能・各種状態異常耐性などの耐久系、クイックアビリティや高揚(奥義ゲージが上がりやすくなる)などの支援系、ガッツや自動復活などの特殊系と、キャラクター専用ジーンが存在する。非常に種類が多く、キャラクターによって有用なものも異なる。スキルにはレベルがあり、同じスキルのジーンを複数装備したり、レアリティの高いジーンを用いたり、ジーンのレベルを上げることで効果が上がる。ジーンのレベルアップは経験値ではなく、武器の上限解放と同じシステムだ。
ジーンにはランダムでサブスキルが付与されていることがあり、効果はメインスキルと同じ量なので、最終的にはレジェンド+のジーンで全ての枠を埋めるのが理想となる。メインスキルはクエストによって何が落ちるかは決まっているが、サブスキルは完全にランダムというハクスラ要素である。「よろず屋おたのしみ券」を消費することで行う「ジーン錬成」「上級錬成」でも最終形のジーンを狙えるため、狩りに出る→不要なジーンをおたのしみ券に変換してガチャ。を繰り返すことになる。無料のガチャだ、アンビリーバボー。後半のクエストをクリアする毎に1個ずつ手に入る「遺物」を鑑定することでしか手に入らないジーンも存在するなど、サイゲは僕らをガチャ中毒者だと思っているのでガチャコンテンツを豊富に用意してくれている。ありがとうな。
このゲームをオフラインで遊ぶ場合は自分とNPC3人でクエストに向かうことになる。リリンクのNPCはかなりちゃんと戦ってくれるし、育成をすると戦闘内容に大きく反映される。そのため操作キャラだけでなく仲間まで育成することが重要であり、結果的に育成がかなり楽しくなっている。マルチプレイは1キャラだけ育てればどんどん高難易度コンテンツに挑戦していけるのがメリットだが、じっくりと育成すればNPCとでも余裕をもってエンドコンテンツを攻略できるのが非常に良い塩梅だった。僕は究極武器がドロップするエンドコンテンツはオンラインのランダムマッチングで行ったが、素材集めなどはほとんどオフラインで黙々とこなしていた。
とはいえ、オンラインマルチはかなり性悪説に基づいて作られており、オンラインメインで遊んでも不快になることはほとんどないだろう。戦闘中のコミュニケーションは定型文とスタンプのみだし、一定時間無操作だと自動的にNPC操作に切り替わる放置対策もされている。基本的に損することはないので気楽にやってみてもいいだろう。僕はPS+に加入してなかったので700円払うことになった。
Good
- 『グラブル』を見事に3D化したグラフィック。
- 手触りが良く、キャラ毎に個性的なアクション。
- キャラクターボイスが豊富で助かる。
- やりこみがいのある育成要素。
- ガチャが無料。
Bad
- マップ探索が不便。
- ストーリーに特筆するところがない。
- 「おたのしみ券」を使ったガチャのテンポが悪い。
- スカーサハ様がいない。
- リリースが遅すぎた。
総評
『グランブルーファンタジー リリンク』はサイゲームスのコンシューマ進出の足がかりとして十分な完成度だったと言えるだろう。豊富な育成要素やリプレイ性の高いバトルコンテンツ、そして個性的で動かして楽しいキャラクターに、思わず再び生活がグラブルになってしまうところだった。ストーリーは語るべき面白さではないが、締め方は悪くない。グラブルのファンディスクとしては満点とも言える出来だろう。同社の今後のコンシューマープロジェクトにも期待がかかる作品となった。メタルマックスのことを頼む。