『ファイナルファンタジーVIIリバース』はスクウェア・エニックスが開発、PS5で発売されたRPGである。『ファイナルファンタジーVII』のフルリメイク作品であり、シリーズ3部作の2作目にあたる。1作目ではミッドガルを非常に高い解像度で描き、今作では物語のターニングポイントとなる忘らるる都までのストーリーが描かれる。『リメイク』はリニアなゲーム進行だったが、『リバース』では広大なフィールドを自由に探索できることが主な特徴となる。
あのゲーム(以下、あのゲーム)が期待外れだったため、僕はこちらを「真のFF」と期待して非常に楽しみにしていた。サブクエ概ね消化、フィールド探索要素コンプでストーリークリアまで82時間ほどプレイした。
※プレイしたのは発売日から1ヶ月ほどの間
目次
誰も見たことのない旅が始まる
前作のクライマックスにて「運命の番人」を撃破したクラウドたちは、セフィロスを追ってミッドガルから旅立つ。『リメイク』の作中で何度か現れ、展開をオリジナル版に寄せて修正していた運命の番人(通称:原作厨)を倒したことで『リバース』では物語が大きく変わることが示唆されていた。物語についてはネタバレを含むため後で触れるとして、ゲームデザイン的に大きく変わった点としては、やはり広大なフィールドの探索要素だろう。完全なオープンワールドという訳ではないが、メインストーリーで訪れる6つのエリアをある程度自由に探索することができる。探索要素は前作にも登場したチャドリーに紐づけられており、ワールドレポートとして報告することでキャラクターの成長要素などに絡んだ報酬を受け取ることができる。また、戦闘面でも「連携アクション」「連携アビリティ」が追加され、特に連携アクションはATBゲージが無い時の立ち回りの選択肢を大きく広げてくれた。
シナリオは前作に引き続き、やりすぎなくらい膨らまされており、見たかったものを高解像度でしっかりと見せてくれる。ジュノンからコスタへの船旅中に神羅兵のコスプレしてヨタヨタしてただけのレッドXIIIをあそこまで広げるとは思わないじゃん?でもアンダーソーサーで唐突にチョコボレースに参加させられるのは流石に暴走しすぎだろ……と思ったら、これは原作通りのエピソードだった。FF7は元からやや様子がおかしいゲームなのだ。
ミニゲームの尋常でない豊富さも本作の特徴だろう。特に「クイーンズブラッド」というカードゲームはゲーム全体を通して頻繁に遊ぶことになるが、次の相手が出てくるのが待ち遠しくなるほどには面白かった。ラスボスの能力がゲームのルール破壊系なのも個人的には好み。
グラフィック・サウンドも前作に引き続き非常に高品質。ここまで高精細に描かれたJRPGの世界は他ではなかなかお目にかかることはできない。サウンドもグラフィックに合わせて解像度を上げられているが、オリジナルのキャッチーなメロディーが入ってくることでゲームらしさを感じることができる絶妙なバランスになっている。
あのゲームのサブクエストは全てマーカーを追いかけるだけのおつかいだったが、本作のサブクエストには話すだけ、戦闘するだけのものはほぼ存在しない。専用のUIで画像を見て探しものをしたり、ものによっては専用のミニゲームが用意されているくらいの作り込みだ。それが嬉しいかどうかはともかくとして、本当にすごい。
なお、本記事における「褒め」のパートは以上となる。
先鋭化しすぎた戦闘
前作は難易度イージーより下のクラシックモードでクリアし、戦闘の面白さを理解することができなかった。本作ではそのリベンジとして、難易度ノーマル・アクションモードで、開発者の考えた戦闘の面白さと真剣に向き合ってみることにした。
……が、最初のエリア「グラスランド」で受けるクエスト「家畜を襲う魔獣」のボスが強すぎて早くも心が折れそうになった。大丈夫か?僕が下手なだけなのか?
本作の戦闘は通常攻撃やガードをしてATBゲージを溜め、敵によって異なる条件で発生する(弱点属性で攻撃したり、特定の攻撃を避けたり)ヒート状態を狙い、敵をバーストさせたらアビリティやリミットブレイクで大ダメージを与えるという流れになる。アクション要素でATBゲージを溜めるコマンド戦闘といったところだろうか。
アクションと戦略性が融合したバトルといえば聞こえはいいが、実際プレイした感覚としてはアクションを完璧にこなして初めて「コマンド戦闘をする権利」を与えられるという感じであった。直前にやっていたゲームもアクションRPGだったのだが、本作はあまりにも回避行動の性能が低すぎる。ジャスト回避みたいなタイミングで反応することでなんとか回避可能な一部の攻撃だけ避けることができる。大部分の攻撃は異常なまでの追尾性能を持っており、回避行動に無敵時間も(おそらく)ないため、基本的にはガードを振り回していくことになる。ちなみにこのガード、攻撃やアビリティをキャンセルしてガード……なんてことはできないため、敵が動いている時は基本的にガードしていることになる。また、ジャストガードが成功するとダメージが0になるのだが、多分これを確実に成功させるのが前提の難易度になっている。成功させて当然、できないやつは無慈悲に死ぬ。僕がアクション下手なのはあると思うが、ゲームバランスの取り方がペナルティ寄りすぎる。
地味に敵の攻撃をガードして溜めたATBゲージを使ったアビリティも、予備動作中に敵の攻撃でキャラクターがふっとばされると無慈悲に発動を潰されるのも悲しかった。というかこのゲーム、味方が吹っ飛びすぎである。敵はほとんどスーパーアーマーなのに。あまりに吹っ飛びが許せなくてバレット操作でど根性を愛用していた。あとは、操作キャラが敵にタゲられたらキャラチェンジとかいう消極的な戦い方をしていた。
ストーリー後半まではなんとかアクションモードでプレイしていたものの(難易度はたまにイージーにしてた)、ニブルエリアのローチェ戦で遂にギブアップ。クラシック堕ちしてしまった。というのも、ローチェ戦の前半は非常に簡単なのだが、ムービーを挟んで後半に突入すると急に即死してリトライは最初からというのが普通に面白くなくて無理だった。ローチェを倒した後にまたアクションモードに戻してしばらく足掻いてみたが、社長でまた躓いたのでその後はどうでもよくなった。
前述の僕が躓いたシーンには共通点がある。それは一騎打ちのシーンであるということだ。ローチェの前にもバレットvsダインとかもかなり苦戦した。というか、このゲーム……一騎打ちが面白くないのだ!折角リバースから追加された連携アクションも使えないし、使えるATBゲージも1人分なので取れる行動がかなり限られてくる。また、このゲームはRPGだが、取得経験値に大きくレベル補正がかかるため、レベリングでボスを突破することはできないのも難だった。とにかく敵の攻撃を覚えて正確に対処するしかないのだ。
なぜかこのゲーム、一騎打ちでそのキャラが苦手な性質の敵とぶつけようとするのも最悪すぎる。クラウドはカウンターキャラなのだが、社長戦とかカウンターが1回も成功することがなかった。普通は逆じゃない?
以上から見えてくる本作の問題点、それはおそらくだが、開発が長期化して開発者・テスターがゲーム上手になりすぎてしまったのではないかと思っている。とにかくアクションを完璧にこなせることが前提になってしまっている。正直なところ、本格的アクションを銘打っていたあのゲームよりもアクションが難しい。
「クラシックモードならアクションが苦手な人も楽しめますよ^^」というのは本作を高評価している人たちの常套句だが、そもそもクラシックモードは全然面白くないのだ。クラシックモードのオート操作が優秀かと言うと、まあ生存能力はあるのだが、ひたすらガードに専念しているのでめちゃくちゃ地味。コマンドRPGとしてみると、敵のターンがいくらなんでも長すぎる。敵だけ楽しそう。多分アクションが苦手でも楽しめると言ってる人はアクションが得意でクラシックモードを遊んだことがない人か、全くプレイしたことがなく評価だけを見てゲームを評価している人だろう。
「やらされ」感の強いエリア探索
本作のエリア探索は、まず通信塔を起動してエリアマップを開示し、表示されたポイントでモンスターの討伐やアイテムの発掘などを行っていく。ワールドレポートはパーティ経験値やマテリア開発、装備品のレシピなど様々な成長要素に紐づいている。そのため「コンプしていくのが義務」くらいの圧を感じた。
「自由な探索」を銘打っているが、調査ポイントまでのルートは決まっており、多くの人が想像しているオープンワールドよりは迷路と言ったほうがニュアンス的に近いのではないだろうか。すぐそこに見えている崖の上(下)などに行くのにやたら回り道を強いられるし、山チョコボや森チョコボなどが手に入っても移動が便利になるわけではなく、決まった場所が通れるようになるだけ。ダンジョンでいうと鍵が手に入るようなものだ。森チョコボのキノコジャンプはマップを見てもどこに着地するかわからない一方通行ワープだし、空チョコボの滑空は行ける場所が決まっているのに、どこが正解かは自分で操作して見つけないといけない。本当に便利だと思ったのは最後に手に入る海チョコボくらいである。後半のチョコボを前半のエリアに持ち込んでルート破壊できたら楽しかったのだが。なお、コスモエリアの空チョコボはガチで滑空ルートがわからなくてサブクエをいくつか諦めた。このゲーム、とにかく正解が1つなので疲れる。攻略を見るの前提か?
1つ目の探索エリアであるグラスランドはチョコボ限定ルートもなくかなり快適、かつボリュームもかなりあるため、おそらくメディアレビューなどはグラスランドだけを遊んで星100個!とか言ってるものだと考えられる。しかし、このゲームが牙を剥いてくるのはジュノンエリアから先なのである。ゴンガガくらいまで遊んだら流石に正気に戻ると思う。
ワールドレポートに紐づいているチャドリーが鬱陶しいのもマイナスポイントだ。なぜか自分を女体化したMAIという人格を作り、それに塩対応するという謎の性癖を見せつけてくる。MAIの声は石見舞菜香さんなのでかわいい。
ついでにエリア探索とはちょっと違うポイントだが、ギミック満載でJRPGのお手本のようなダンジョンも今どきあまり見ないなと思った。ユニークで意欲は感じるが、マジで道がわからないし古代種の神殿は長すぎる。ライフストリーム探しで隅々までゴミ拾いさせるのは流石にやりすぎだ。
多すぎるミニゲーム
前作もオリジナルにあった要素を本格的ミニゲームに広げたりしていたが、本作はそれに輪をかけてミニゲームの数が多い。プレイ前は本格的になったゴールドソーサーを楽しみにしていたが、いくらなんでもミニゲームの種類が多すぎてゴールドソーサーに着く前に食傷気味になってしまった。サブクエでもあまりにもミニゲームをやらされるため、戦闘のみで終わると逆にほっとした。全てのミニゲームがWOFFよりは出来がよかったのはややポジティブな点か。
ミニゲームの数が多いだけなら良いのだが、あらゆるミニゲームに装備品やキャラの成長要素が紐づいており、ミニゲームを極めないとバトルをやりこむ資格を手にすることができないのが最悪だった。このミニゲームを極めるというのは本当の意味でミニゲームを極めるということで、マジで理論値近い動きをしないと最高報酬が出ないのである。
メインストーリーや探索に必須のミニゲームも最悪だった。エリア探索に必須のチョコボはステルスゲームをクリアしないと手に入らない。グラスランドのチョコボはともかく、ジュノンから先はノロノロと遮蔽物と同期して動くのを求められ、何度失敗しても救済がないのも信じられなかった。モーグリコープとかいう白豚捕獲ミニゲームは各エリアでやらされる上に後半ほど難易度が上がり、こっちも武器の使用を許可してほしいくらいイラついた。ちなみにこのミニゲームは失敗すると被弾可能回数が増えるという救済があるらしい。武器の使用を許可しろ(2回目)。
ミニゲーム個別感想
- ピアノ演奏→アナログスティックの傾きで正確に演奏するのは無理がある。滅びろ。
- コンドルフォート→難易度が高すぎる。レベルを上げたらクリアできるくらいの救済がほしい。
- 腹筋→L2R2の押し込みがカスすぎてデュアルセンスエッジの拡張ボタンに割り当ててクリアした。
- 箱壊し→まずルートを覚えないとどうにもならないのが面白くない。
- フープデチョコボ→急上昇が意味不明すぎる。
- ガンビットギアーズ→難易度が高すぎる。ガンビットなのにプレイヤーの操作量が多すぎる。これもレベルがほしかった。
- サボテンノック→ユフィ操作は許せるが、なぜエアリスでやらせようと思った?
- ニワトリカンカン→最悪のミニゲーム。
- ケットシーバスケ→最悪のミニゲームかつメインストーリー進行に必須。
ストーリーネタバレ感想
初志も虚しく、アクションを楽しめなかった僕はゲームを進めるモチベーションがストーリーの結末しかなくなっていた。キャラクターの解像度が上がり『リメイク』の時から、このエアリスが死んだら絶対に泣くと思っていたが、結論から言うと『リバース』のエンディングを見ても泣くことはなかった。
本作のクライマックス、「忘らるる都」でクラウドは運命の壁を超え、エアリスを貫くはずだったセフィロスの刀を弾く!このシーンはコントローラーを持ったまま立ち上がるくらい興奮した。が、そこが興奮のピークで、その後やっぱ死んだ?死んでない?みたいにガチャガチャとパチンコみたいな演出をされ、クッソ長いラスボス戦が終わったと思ったらやっぱり死んでた?みたいな感じだったので、泣くタイミングがなかったのである。ラスボス戦がとにかく意地悪で盛り下がったのもよくなかったのかもしれない。
ストーリーに関しては本当にそれくらいである。充実したサイドエピソードでのキャラクター描写や、ティファがジェノバなのか?などの中盤までの揺さぶりは面白かった。
Good
- 発売1ヶ月後でも4000円で売れた。
Bad
- 迷路と化したエリア探索。
- 先鋭化しすぎた戦闘。
- 多すぎるミニゲームの押し付け。
- 結末が期待外れ。
総評
3部作の2作目となる今作『ファイナルファンタジーVIIリバース』は、新たなアクションや広大なフィールド探索が追加され、前作の正当なパワーアップ版と言えるだろう。しかしグラフィックやサウンド・キャラクターの表現などは前作の延長線上であり、高品質であることが前提になってしまっているため、新しい感動は薄い。あのゲームは無だったが、本作はストーリーを見るためのゲームプレイがひたすら苦痛だった。3部作の最後となる次回作は、今のところ買わない予定である。