『ドラクエ7リイマジンド』レビュー

『ドラゴンクエストVII Reimagined』は、スクウェア・エニックス/ヘキサドライブが開発し、スクウェア・エニックスが発売したRPGで、2000年(!)に発売された『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』を、手作り感のあるドールルックで“再構築(Reimagined)”したリメイク作品である。

舞台は、広い海にぽつんと浮かぶ孤島「エスタード島」。世界に陸地はこの島しかない――そう信じられている閉じた世界で、主人公と親友の王子キーファは好奇心から石版のかけらを集めていく。そして、立ち入りが禁じられている謎の神殿で、石版を台座にはめ込んだとき、一行は見知らぬ場所へ辿り着く。

「ドールルック」が拓いた、シリーズの新境地

本作の最大の特徴は、ドールルックを採用したミニチュア(ジオラマ)風のビジュアル表現にある。これは単なる見た目の新しさに留まらず、作品全体の体験価値を押し上げる方向に機能しており、手放しで大成功だと言ってよいだろう。

マップがややコンパクトに作られている点も、このルックと噛み合っている。リアルな縮尺で広大さを演出するのではなく、箱庭を覗き込むような密度とまとまりを優先したことで、雰囲気が良いだけでなく移動の快適さにも繋がっている。

また、実際に人形を作ってモデリングしたのは主人公たちだけらしいが、モンスターにも本作独自の質感が与えられている。立体の説得力が増し、シリーズのビジュアル表現として新しい可能性を示した。

徹底的に現代化されたテンポ

本作では、ゲーム進行のテンポも現代的に再構築されている。とにかく長いと知られているDQ7だが、本編クリアまで約40時間で到達できた。

戦闘面では過度に長い演出が抑えられており、バトルスピードの調整も用意されている。ただしデフォルトでも十分にテンポが良いため、少なくともクリアまでであれば通常速度のままでも快適に遊べた。

また本作はシンボルエンカウントを採用しているが、プレイ感としては厳密なリソース管理を強く求めるタイプではない。そこで敵シンボルの挙動を「襲ってこない」に設定し、道中は初見の敵を図鑑に登録する程度に留めた。結果として、ボス戦以外の戦闘を最小限に抑えられ、探索はかなり快適に進んだ。

DQ7といえば石版探しやフラグ管理で迷いやすい作品だが、本作では目的地のマーカー表示により進行が大幅にスムーズになった。逆に言えば、テンポが改善されたぶん、NPCや仲間との会話をあまり回収しないスタイルだと、旅の味わいが薄く感じられる可能性はある。

ボイスがついたマリベルがヤバい

DQ7Rの新要素として見逃せないのが、ボイスの追加である。イベントシーンにボイスが付いただけでなく、戦闘中の掛け声や息遣いといった情報が増えたことで、キャラクターの存在感が強くなった。

この恩恵を最も受けているのは、やはりマリベルだ。『ドラゴンクエストヒーローズ』で悠木碧さんの声が付いた時点で「やばい!!!!」と思っていたが、本作ではドールルックによる表情と仕草、そしてボイスが噛み合い、マリベルがヒロインとして完全体になってしまった。本作のディレクターも「マリベル、人気でよかったなあ…」とXでポストしていた。お前のおかげか、ありがとう。

キーファについても、ボイスの力は大きい。マモの演技が良い分、感情の揺れや迷いが伝わりやすく、憎みきれない方向へ寄っていく……いや、お前は虫がよすぎるだろ!

それと、ボイスが付いたことで、シナリオ終盤で復活した神が喋りだすともう面白いという問題もあった。

一方で、パートボイスはテキストと噛み合わない場面が目につき、短いリアクションが意図と違って聞こえることが多かった。フルボイスでないメッセージにまで無理に入れる必要はなかったように感じる。

バトルについて

「モンスターのつよさ」を「つよい」に設定し、通常ラスボスまで攻略した。戦闘面の大きな変化として、各キャラクターが個別のインベントリを持たず、戦闘中でも共通の「ふくろ」からアイテムを使用できる点が挙げられる。さらにオートバトルがアイテム使用まで行うため、少なくとも序盤は適当に進めていても危うい場面はほとんどなかった。

バランス面では、オリジナル版で苦戦したデスマシーンのような相手も、今回はオートでかなり楽に倒せた。一方で転職が解禁されるダーマ以降では、オート任せだと崩されがちになる。「めいれいさせろ」に切り替えて自分でコマンドを入れれば十分に勝ち筋が見える程度で、手応えとしてはちょうど良い。

ただし終盤になると、「ふくろ」から誰でも回復アイテムを使える仕様が逆に働くこともあった。オートバトルでは回復役以外まで各自でやくそう等を使い始め、そのまま立て直せずに全滅というパターンが多かった。

新要素の「バースト」は最近のシリーズのテンションや超絶技より扱いやすく、効果も職業に紐づいたユニークさがあって良い。勇者のバーストは特に強力に感じられるが、クリア後はそれだけでは通用しなくなるため、通常ラスボスまでの救済として機能しているようにも思えた。フィールドアタックで格下の敵を戦闘に入らず倒せるのも爽快で、テンポ改善に寄与している。ただ、快適なぶん稼ぎすぎてしまう面もある。

「職業かけもち」と「どこでも転職」が解決した、30年来のジレンマ

DQ7Rの育成要素は、シンプルにレベルと職業(クリア後は種)を軸に構成される。本作で特に優れているアイデアが「職業かけもち」の導入で、物語が進むと1キャラクターが2つの職業に同時に就けるようになる。メイン/サブといった序列はなく、2職分のステータス補正と呪文・特技などが適用される。

かけもち解放後は、2職が同時に熟練度上昇の対象となる。さらに片方がマスター済みの場合、もう片方の熟練度にボーナスが入る仕様もあるため、「いま使いたい職」を残したまま、もう片方で育成を進めるという運用が成立する。結果として、職業制ドラクエで起こりがちな「育成のために転職すると戦力が落ちる」「せっかく育てた職で戦えない」といった問題を、かなりうまく緩和している。

そしてもう一点優れているのは、転職解放後しばらく進めると入手できる「ダーマ水晶」により、以降はダーマ神殿へ戻らずとも、どこでも転職ができるようになることだ。5人で最大10職を育成できる本作では転職の頻度が高くなりがちなので、この取り回しの良さはありがたい。

加えて現代のダーマ神殿では、大神官が新キャラクターの「ミレッカ」になっている点も嬉しい。作中では彼女が、過去ダーマの人気キャラ「フォズ大神官」以来の神童として語られ、本人も「生まれ変わり」を自称している。見た目もフォズの色違いで、キャストも同じ。

キャストは『ドラゴンクエストライバルズ』出演時と同じとのことで、フォズの方は「りえりーはこんな声も出すんだな」という意外性のある演技だったのに対し、ミレッカは完全に持ち味が出ている。ライバルズの時点から、この方向性を見越して仕込まれていたのでは……と想像してしまうほどだ。

そして「ダーマ水晶」は頻繁に使うことになるため、転職のたびにミレッカが仕上がった台詞を投げてくるのが癖になる。育成の話をしてるはずだったのにミレッカすきすきゾーンになってしまった。

密度が再配分されたストーリー

DQ7Rのストーリーは、原作では冗長になりがちだった箇所を整理しつつ、“再構築(Reimagined)”の名にふさわしく手が入っている。取捨選択が話題になりやすい一方で、追加エピソードも用意されており、単純な圧縮ではなく「密度の再配分」を狙った作りだと感じた。とりわけキーファとマリベル周りは補完の比重が大きく、原作では行間に委ねられていた部分に答えを与えようとしている。

本作の基本構造は、過去と現代を行き来しながら「島を解放→問題解決→石版入手→次の島へ」というサイクルを回す短編連作型である。1つのエピソードが終わる度に住民の反応が更新され、喜びや感謝のメッセージを受け取っては調子に乗る天才美少女マリベルを摂取できるのも、この作品ならではの味だ。住民の反応はイベント毎にかなり細かく更新されるため、こういった会話の回収が好きなプレイヤーにはたまらない。

キャラクター面では、キーファの心の動きがかなり深掘りされ、声の演技も相まって感情のグラデーションが見えやすくなった。ただし、肝心のユバールの使命が大局的にはあまり意味を持たないままで、キーファの決意って結局なんだったんだ……という感じになった(DQ7らしいエピソードではある)。一方でマリベルの追加エピソードはヒロイン力がぶち上がりすぎており、ドラクエシリーズでここまでヒロイン力が高いキャラは他にいないんじゃないだろうかという域に達した。

そしてDQ7といえば、後味の悪い展開やビターエンド、どうしようもない村人たちが魅力として語られがちだが、その「救われなさ」は本作でもしっかり残してきている。一部のエピソードには大きめの改変も見られるものの、選択肢次第では原作の味に寄せた着地も用意されており、原作ファンへの配慮も欠かしていない。個人的には、整理と補完のバランス感覚は良好だったと思う。

クリア後は少し大味

本編は「モンスターのつよさ:つよい」で通常ラスボスまで倒し切れたのだが、クリア後のダンジョンでは雑魚相手ですらオート任せだと苦労する場面が増え、「よわい」に落としてしまった。

さらなる異世界に突入してからはプラチナキングが出現するため、レベル上げは一気に大味になる。レベルがカンストすれば次は種集めが中心になるのだが、カンスト後の稼ぎは途端に作業感が強まり、個人的には飽きが早かった。ドラクエのやり込みは「レベルを上げるのは大変だが、上げきれば裏ボスまで余裕」という昔ながらのバランスの方が好みで、例えば『DQ5』ならレベル40程度でもエスタークを10ターン以内に倒せる。

本作の最終的なやり込み要素は「裏ボスを周回して超種集め」になるのだが、シンプルすぎてやや味気ない。RPGツクールでゲームを作り始めたばかりの人が考えたエンドコンテンツか?

とはいえ、納得のいく部分もある。ちいさなメダルはゲーム内の「メダル手帳」の情報のみで集めきれたので、外部攻略を前提にしない設計になっていたのは良かった。また、闘技場のクリア後要素「修羅の道」はモンスターのつよさ設定が反映されないという悔しい仕様ではあるが、最終的にはマダンテ連発で押し切れた。ドラクエ的な育成で押し切れる余地が残されているのは救いである。

【コラム1】 戦略か、義務か。近代ドラクエが陥った「戦闘を面白くしようとしすぎた」弊害

本作をプレイしていて、終盤の戦闘バランスに感じていた「モヤモヤ」の正体。それは、近年のドラクエが抱える「戦闘を戦略的に面白くしようとしすぎている」点にあるのではないだろうか。

かつてのドラクエにおいて、スクルトやバイキルトといった補助呪文は「使うと戦闘を有利に進められる」程度の立ち位置で、プレイヤー側の選択肢のひとつに過ぎなかった。しかし近年のバランスはバフ・デバフの重ねがけを前提に調整されていると感じる。しかも有効時間も短く設定されており、数ターンごとに同じ呪文を唱え直す義務に変質してしまった。

バフが「義務」になったことで、シリーズ伝統の技「いてつくはどう」の立ち位置も変わる。かつては「格の高いボス」が使ってくる特別な技で、バフを諦めるか、フバーハだけは維持するか、あるいはアタッカー一人にだけバイキルトを託すか――といった、普段とは違う意思決定が求められた。だが今や、短い周期で張り直す前提のバフをさらに前倒しで無効化されるだけになりやすく、戦略というより徒労感の方が勝ってしまう。

堀井雄二氏はかつて「ドラクエはレベルを上げれば必ず勝てるようにする」と語った。ドラクエの戦闘は本来、地道にレベルを上げて敵を倒し、成長の手応えを噛み締めるためのものだったはずだ。にもかかわらず近年は、派手なシナジーや複雑なパズル性を盛り込むことで、戦闘そのものを「面白く」しようと背伸びしすぎているきらいがある。その結果どうなるかというと、「戦略」の答えを攻略サイトから引用するゲームに寄ってしまうのだ。

【コラム2】難易度変更という名の「毒」——羅針盤を失った勇者たちへ

マリベル「これ、毒です」

近年のドラクエでは標準となった「いつでも難易度(各種設定)を変更できる」仕組み。しかし、これがドラクエのような「こつこつと積み上げる」タイプのRPGにおいて、実はプレイ体験を劇的に冷めさせる要因になっているのではないだろうか。

DQ7Rでは「モンスターのつよさ」などを含め、プレイヤー側がオプションで細かく調整できる。その自由度自体は救済として優秀だが、同時に「作り手が想定した最高の体験」がどこにあるのかという羅針盤が失われた状態になってしまっている。

いつでも変更できる以上「レベル上げだけ難易度を落とす」という選択は一見すると合理的である。だがそれは、RPGにおける「努力と報酬のサイクル」を自ら断ち切ってしまう行為でもある。「楽をできるボタン」が目の前にある状態で、あえて茨の道を進み続ける選択をするには、あまりにも強靭な意志が必要だ。そして一度でも「楽な道」を知ってしまうと、元の緊張感へ戻るのは思っている以上に難しい。

一度難易度を下げてしまうと、プレイヤーの頭にこんな問いがよぎる。「さっきは設定を落として稼いだのに、ボスだけ真面目に苦労して戦う意味はあるのか?」――この問いがよぎった瞬間、勝利の達成感よりも「整合性のなさ」への意識が前に出てしまい、「もう、どうでもいいか」という冷めた感情が芽生えやすい。ゲーム体験の死である。

堀井雄二氏の「レベルを上げれば必ず勝てるようにする」という哲学は、難易度を下げて解決するのではなく、「ゲーム内の努力(レベル上げ)で解決できる余地を残す」という、システム内の救済だったはずだ。

今のドラクエに必要なのは、プレイヤーに選択を丸投げする「自由」だけではなく、「この設定で遊べば、きちんと面白さに辿り着ける」という作り手側の強い基準――ある種の強引なまでの自負なのかもしれない。

総評

本作の「令和のDQ7」としての再構築は、成功していると言ってよいだろう。第一に、ドールルックが生むミニチュア(ジオラマ)風のビジュアルが圧倒的に新しく、今後のドラクエの可能性を感じさせる。第二に、テンポの現代化が徹底されており、長編であるDQ7を“遊び切れる”形に整えた功績は大きい。そして第三に、ボイスと演出、追加ストーリーの相乗効果によって、マリベルがヒロインとして完全体になってしまった点が素晴らしい。おすすめできるプレイヤーは、DQ7未経験者、あるいはDQ7経験者。

GOOD

  • ドールルックのミニチュア感が大成功
  • テンポの現代化が徹底
  • ヒロインとして完全体となったマリベル
  • 職業かけもちが素晴らしいアイデア
  • NPC会話の回収が楽しい

BAD

  • 終盤の戦闘バランスは好みが分かれる
  • クリア後の要素が雑