RPGとしての完成度は今一歩だが、百合ゲーとしての満足度は高めの「BLUE REFLECTION TIE/帝」レビュー

「BLUE REFLECTION TIE/帝」はコーエーテクモゲームスのガストブランド開発のヒロイック・ロールプレイングゲーム。2017年に発売された『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』の続編。
2021年4月からテレビアニメ作品の『BLUE REFLECTION RAY/澪』が2クールに渡って放映、10月にコンシューマーゲーム作品『BLUE REFLECTION TIE/帝』(本作)が発売され、今後スマートフォン/PC対応ゲーム作品『BLUE REFLECTION SUN/燦』が配信される予定とクロスメディア展開されている。

発売直後くらいから大臣って人に「これはお前にも刺さるから早くプレイしる!」みたいなことを言われ続けていたんだけど、年末くらいになぜかアニメの方(ブルリフR)を見始めてゲームもプレイしたくなったのでようやく購入。アニメは作画が怪しく、特に戦闘シーンは目が離せなかった。内容はスロースターターだけど面白いよ。

同ブランドゲーム「ライザのアトリエ」との比較多め。

我々が本当に求めていた直球百合

向こうの世界探検隊

ごく普通の少女 星崎愛央は学校を模した異世界に迷い込んでしまい、そこで暮らしていた3人の少女と出会い、元の世界に戻る方法を探すことになる。
愛央以外は記憶をなくしており、特定の条件を満たすと出現する「ココロトープ」というダンジョンに潜って、少女たちの記憶を取り戻すことで物語が進んでいく。
ココロトープで見られるのはそのキャラクターの大切な思い出ということで、ブルリフRみたいな最悪家庭環境展覧会にはなってなかったので安心(アニメのあれは本当に何?)。
正直僕はキャラクターの悩みとかそういう他人の人生的な話に全く興味がないので、記憶を取り戻すことでキャラクターエピソードと世界の真実みたいな話をバランスよくお出しされて助かった(TSKR)。

無印や澪よりも先の時間軸のお話なので、履修しているとより楽しめる。僕は無印未履修だったので、日菜子まわりの描写がイマイチ刺さらなかったが、メインストーリー自体は帝で完結してよくできていると感じた。大丈夫、またソシャゲで会えるさ!

一番良かったのは、メインストーリー内で百合カップルが完成するところ。っしゃあ!これが見たかったんだこれが!!

加速していくバトルは調整不足

バトルは特殊なウェイトターン制。
時間経過で貯まっていくエーテルを消費して技を使う。技を使うとギアが上がり、エーテルの貯まる速度が上昇し、使用できる技も増える。更にコンボ数が増えるほどダメージ倍率が上がるので、結構な勢いで戦闘は加速し飛び交う数字も派手になっていく。攻撃が派手な反面、アイテム以外の回復がかなり貧弱。弱点を突くと敵のタイムラインを押し戻すことができるので、できるだけ攻撃を受けないように立ち回るデザインか。

前衛3+サポーター1の4人でPTを組み、操作キャラ以外の2人はオートで行動する。指示も出せるが、的確に殴ってくれるでのオートで十分だろう。
サポーターはサポート行動のスロットに入れたスキルを一定ターンで使う。微量の回復、敵のダウン率アップ等、なんかピンとこない効果が多かった。ゲーム上手い人なら効果的に使えるのかもしれんが、もっとわかりやすく強くてもよかったのでは。
後半になると戦闘メンバーを5人以上の中から選ぶことになるけど、余った人は何もしない。何かなかったの。

この戦闘システムの性質上、ザコ戦はかなりダルい。ギアが上がるまではちまちま殴るしかないので被弾は避けられないし、ギアが上がりきったらすぐに戦闘が終わってしまう。ゲーム終盤でも低ギアは基本の単体攻撃しか使えず、ドラクエ序盤の戦闘をゲーム終盤になってもずっとしてるような感じ。シンボルエンカウントだが、どいつもこいつもレベル関係なく追いかけてくるので地味に戦闘回数多いし、終盤は普通にプレイしていてもレベルがカンストしてザコ戦のダルさが増す。

ボス戦も練り込み不足というか、インファイトバトルが面白くない。
インファイトバトルはパーティメンバーの1人がボスと1vs1になり、攻撃・カウンター・回避などをタイミングよく選んで戦う。カウンターや攻撃が一定の回数成功するとフィニッシュ攻撃に移って大ダメージを与える。
これがまあインファイトバトルのチュートリアル以降多くのボスが挑んでくるんだけど全然面白くない。相手によって回避・カウンターのタイミングが違うくらいでやることは同じだからだ。
ボス戦ではギアが上がりやすく、普段使わない大技の見せ所なんだけど、モーション中にインファイトバトルを申し込まれるとキャンセルされるのも最悪だった。せめて消費したエーテルを返してほしい。
インファイトバトルに強くなるフラグメント(装備)もあるんだけど、ランダムで指名されるので特化してもあまり意味がないのも面白くない。フィニッシュ攻撃がカッコイイくらいしか良いとこない。
インファイトバトルのチュートリアルでは「相手のバリアを割ると、こちらからインファイトバトルを仕掛けられる!」みたいな解説をされるけど、クリアまでそんな状況が発生したことなかった。

ボスは他にも予兆付きの攻撃を行ってきて、愛央(か陽桜莉)の特技でガードしないとコンボ数をリセットされ、ダメージ倍率が戻ってしまう。わかりきった予兆攻撃を防御しないといけないのがまず面白くないと思うんだけど、防御しても敵の攻撃演出でこちらのモーションがキャンセルされ、更に演出中は味方のエーテルすら回復しないのがクソすぎる。え、こっちの攻撃は待ってもらえないのにか?せっかくギアが上がる機会なのに、面白くない差し込み行動が多くてストレスになった。

後半にボス戦がやたらと多いのも気になった。
ある目的で攻略済みのココロトープに再び向かい、強化されたチャプターボスと戦うイベントがある。
現在の強さにスケールされた序盤ボス相手に再び戦略を練ったり、相手によって編成や戦い方を変えたり……ということは一切なく、全員同じPTで同じように殴れば倒せる。
そして、過去ボスと一通り戦ったと思ったらラストダンジョンにもやたらと中ボスがいる。もういいよ、ボス戦飽きたよ。レベルもカンストしてるし、装備とかも落とさないし。

ハァ……ハァ……バトルの不満点多すぎ!?

学校みたいな異世界でワクワク百合生活!

名前、何にしましょうか。
謎の葉っぱから作ったから「謎茶」はどうですか?

バトルの話はもうやめだ。このゲームの本質は百合!

主人公 星崎愛央および愛央の女(リフレクター)たちは、百合生活によって百合パワーを高めることでステータスを上げていく。

百合工作

ココロトープで拾った素材を使ってアイテムや中間素材を作る。
あー知ってる、アトリエね。といえば半分正解なのだが、作るアイテムの品質は素材ではなく、工作に参加したメンバーによって変化する。というのが今作の独自要素。
いたずら好きの勇希は状態異常付与、みんなのお母さんである詩帆は回復効果上昇など、キャラクターのパーソナリティに因んだ品質効果が付与される。この特性はスキルの取得でも増えていくので、ゲーム後半になるほど効果の高いアイテムが作成できるようになる。

百合工作アイテムは基本的に強くて、戦闘中に技でヒールしても20くらいしか回復しないけど、一番簡単な回復アイテムでも100くらい回復する。非戦闘中にバフ効果のあるアイテムを使うと次の戦闘に持ち越されるのも使いやすくて良い。直接大ダメージを与えるものが多分ないこと以外、ライザの錬金アイテムに匹敵するほどの効果があった(ライザ以外のシリーズはよく知らない)。

しかし、このアイテムにも問題がある。
コアアイテム制ではなく普通に消耗品な上に、素材を集めるのが非常に面倒なのだ。
ライザみたいに採集アイテムがパワーアップして獲得量が増えるとかも存在しないし、通貨や店がないので回復アイテムや低級素材を買うことができず、序盤のココロトープにわざわざ狩りにいくことがあった。なので、攻撃とか補助アイテムを積極的に使おうとはならなかった。

まあこれはバトルの問題点!と言いたいとこだけど、中間素材や隠しルートを開くアイテムを作るのに「砂粒」という序盤の敵(とラストダンジョンの敵)しかドロップしない素材を使うのはゴミすぎた。

学校魔改造計画

学校の中庭に屋台やベッドを作って置くことで、まだこの世界に来ていない少女を呼び寄せたりデートスポットに使ったりする。工作もそうなんだが、よくわからん素材から湯沸かし器などの現代的な機械まで作ってしまうのが謎すぎて、錬金とかの不思議な能力と言われたほうがまだ納得できる。

置いた施設によってステータスが上昇したり、組み合わせによってセット効果が発生することもある育成要素の1つ。デートスポットとして活用することで各キャラのスキルポイントも稼ぐことができる。

ベッドを置いたら愛央が誰とでも寝る女になっちまって風紀が乱れた。

百合デート

百合デートを重ねることで百合ポイントを獲得して百合スキルを習得することができる。フラグメントという装備品も手に入る。お花ちゃん
校内を2人で歩いてデートして、場所によって会話が発生、目的地に辿り着くとイベントが発生する。とにかくポイントだけくれ!っていう超高速愛央のために目的地にワープするショートカットキーもある。目的地は学校を魔改造すると増え、デートスポットを設置した直後などは女たちの愛央待ちがすごい。デートが大渋滞する女、愛央。

ゲーム中盤以降、デート中に突然手を繋ぎ始めて脳が破壊された。
手繋ぎはデートにおけるテコ入れ。距離や位置関係で手を離したり繋いだりする挙動の作り込みを見て、ガストちゃんは全開発力を手繋ぎデートに投入したんだなと思った。圧倒的に正しい。手繋ぎデートはブルリフTの全て。

グラフィックは正当進化

美少女キャラクターの表現としてかなり上質に仕上げてきている。
ライザではしなかった瞬きもちゃんとするようになった。目は睫毛がテクスチャで眼球はモデリングされており、常に揺れている。という話をツイッターでしたら眼球が揺れることに喜びを感じてる人にめっちゃ共感されて怖かった。僕は喜んでません、確認しただけです。
口の動きはライザの時から滑らかだったかな、表情はかなり豊かになっていると思う。

あと、イベントシーンでのモーションの種類も非常に多い。使い回し、テンプレの動きは存在しないか、もしくは気にならない程度だった。ガストちゃん、そこまで作り込めるのか!?侮っていた。

ココロトープの独特なロケーションも見応えがある。これは巨大な梨。

2周目はちょっと……

つまりそれは……
きららと、火遊びをしたいということ?

ゲームクリアすると装備品や一定のスキルポイントを引き継いで2周目を始めることができる。
2周目はエンディングが少し変わるという話なので、できれば見たかったが……

ステルスを2度とやりたくないため断念

囲まれたら一たまりもないね。
見つからないように進もう

このゲーム、やたらと頻繁に厳しいステルスゲームをやらされる。
サブクエストではステルス専用のクエストアイコンが存在するくらいやらされる。
メインストーリーでやらされるのは1回だけど、報酬がメインを進めるのに必須アイテムのサブクエがあって最低でも4、5回はやらされた。必須じゃないやつはもっとたくさんある、1トープに1つくらいはある。

敵の視界は見ることができるものの、視界に入ったら1発アウトでチェックポイントまで戻されるタイプで、10回くらい失敗しても助け舟が入らなかったので救済や緩和は存在しないだろう。
僕はステルスゲームがマジで嫌いすぎるので、ブルリフも諦めよう……と1度は思ったが、どこでもセーブできるのを生かしてこまめにセーブ・ロードしながら攻略するという方法でなんとか必須のクエストだけ突破できた。これが僕の本気の百合ゲーへの執念?

で、セーブ・ロード繰り返してて気付いたんだけど、ロードする度に動く方向が違うやつがいた。いや、見つかったら1発アウトのステルスゲームで動きがランダムって、真面目に作ってないのでは?そういうもん?真剣に攻略するのアホらしいと思ったわ。

総評:手繋ぎデートを目撃せよ!

スポーツ番組は一部の人間を操る
電波を発しているのだ

味のしないバトル、ゴミのようなステルスを
引き込まれるストーリー、魅力的なキャラクター、そして何より刺激的な百合体験が大きく上回る作品だった。RPGとしての完成度はライザの方が100倍くらい上だったけど、他のゲームでは得られない何かを得ることができた。

きららが特に好きだったので燦での活躍が楽しみ!
アニメからコンシューマ、そしてソーシャルゲームへと確かにバトンが渡された。