『聖剣伝説 ヴィジョンズ オブ マナ』レビュー

『聖剣伝説 VISIONS of MANA』(以下、VoM)は、NetEase Gamesの桜花スタジオ開発、スクウェア・エニックスが発売するアクションRPGである。シリーズとして「原点回帰した王道ファンタジーRPG」として位置づけられており、久々の完全新作として「新たな聖剣伝説が始まる」ことを前面に押し出している。

本作はシリーズの血を感じる王道ファンタジーとして作り込みが行き届いており、精霊や世界観の“らしさ”を、現代の手触りへ適切に引き上げている。ロケーションと仲間の会話が作る”旅”感がとても強く、ストーリーも「新たな聖剣伝説」として納得感のあるラインを通している。アクションは複雑さより遊びやすさを優先しており、間口の広い作りだ。

「祝福」として語られる生贄制度

この世界ではフェアリーが4年に1度各地を訪れ、マナの樹へ旅立つ「御子」を任命する。選ばれた御子は、世界に満ちるマナの循環を支えるため、魂を捧げる宿命を背負う。主人公のヴァルは「魂の守り人」として、御子となった幼馴染のヒナを守りながら、マナの樹を目指して旅に出る。

作中では、巡礼が途絶える/御子が失われると土地に呪いが降りかかり、一族ごと滅びると語られる。生贄を連想させる制度でありながら、御子に選ばれることが祝福として語られる空気には、現代的な感覚とのズレがある。

ただしプロローグでは、オーリンがこの制度に異を唱える場面から始まる。加えて呪いが現実の脅威として描写されるため、序盤から「この制度は本当に正しいのか?」という疑義が差し込まれる作りになっている。

なお体験版ではオーリンがまるでヴァルの昔からの知り合いのように現れていたので、印象の違いにびっくりした。本編をプレイしてみたら一回会って話しただけで、次に会うのが体験版のシーンだった。オーリンが裏切るか妖精が裏切るかレースが始まるくらいの怪しさだ。恋人の喪失はラスボスの動機になりがちだし、妖精は妖精なので。

旅を支えるキャラクター会話

本作の魅力を支えているのは、仲間同士の会話密度の高さだ。探索中の掛け合いが非常に豊富で、走っていると途中で次の会話が始まってしまうほど頻度が高い。イベントやムービーに情報を寄せすぎず、移動の最中に会話で関係性や空気感を積み上げていくため、プレイのテンポを落とさずに「旅をしている時間」を演出している。

一方で、この道中会話は「聞き流し前提」の運用でもあると感じた。ボイス再生中にNPCへ話しかけたり、マップ移動を挟んだりすると会話が中断され、基本的に再開しない。きちんと聞きたい場合は、会話が始まったら立ち止まり、聞き切ってから行動する必要がある。ただし、その不便さを補うだけの物量も用意されており、多少聞き逃しても成立するよう調整されている印象だ。「全部拾わせる」より「旅の空気を絶やさない」ことを優先した設計と言える。また、道中会話だけでなく街のNPCも、話しかけられる人数が信じられないくらい多い。

会話の内容は幅広い。制度や土地柄の補足、キャラクター同士の距離感の更新、景色への反応、コメディによる緊張緩和など、聞いていて飽きが来ない。中でも印象に残るのは旅情の演出だ。カリナは「世界中を旅するために御子になった」という設定どおり、景色や土地への反応が過剰なくらい大きく、プレイヤー側の気分まで引き上げてくれる。旅の肯定感を会話で担っているキャラクターであり、関西(?)弁の演技も相まって、このゲームの空気を作っている。

パーティの役割設計も分かりやすい。ヴァルは真面目でまっすぐな受け止め役として会話の軸になり、モートレアは常識人のツッコミ役。カリナはムードメーカーであると同時に、不満を溜めず口にする「プレイヤーの代弁者」として機能する。ちょっと賢くないことを言うのも安心できる。パルミナは素直で浮き世離れしたボケを担い、ジュリは長命者として世間から距離があるのに発言は妙に俗っぽい。ひねくれたことを言う枠でありながら、声と見た目がかわいいので絶妙に許せる。

神獣トートマーニ絡みでエテラナを訪れる一連の掛け合いは特に印象的で、キャラクターを積み上げてきたからこそ成立する崩し方(いわゆるキャラ崩壊ギャグ)になっていた。また、サブクエストの情報収集の場面などで、ヴァル+カリナ、ヴァル+モートレアといった相方をローテーションしてNPCに話しかけるのは、パーティメンバーが置物にならない上手いやり方だった。

余談だがパルミナはハイレグ女王+リス尻尾+武器が鎌+CV日笠陽子で情報過多だと思った。

「何かある」を示す導線設計

本作の探索体験を支えているのが、マップマーカーの設計だ。宝箱や目的物を断定表示せず、青丸で「何かある」だけを示す。この線引きが絶妙で、プレイヤーは「回収作業」ではなく「確かめに行く」気持ちで寄り道できる。答えを先に出さないことで、探索の手触りを作業になりにくくしている。

探索報酬の塩梅も概ね良い。クマミツ、ゴルクロ、ニキータコインはコンプリート前提ではなく、「あればあるだけ嬉しい」タイプの収集要素だ。交換も好きなものから選べるため、探索の成果が「義務」ではなく、きちんと「喜び」として積み上がっていく。

もう一つ、探索体験に寄与しているのが精霊器だ。精霊器は謎解きのための道具というより、フィールドで「派手な演出」を見せるためのギミックに感じた。ヨッシークラフトワールド(吉倉)などの、リッチなプラットフォームアクションに近い印象。

一方で、サボテンくんは例外的にしんどい。街の外側の崖に張り付いているようなカスの配置が混ざっており、性格の悪いやつが担当していたと思われる。加えて報酬が軽い収集物ではなく、全38箇所中発見数30で獲得経験値が2倍といった形でプレイ全体に影響するタイプなので、「やれば得」ではなく「やらないと損」寄り。結果として、ここだけ探索が義務になってしまい、全体の印象を一段落とすポイントだった。

下準備が報われるRPG寄りアクション

VoMの戦闘は、アクションはカジュアル寄りで、RPG的な下準備のウェイトが高い。反面、チャレンジコンテンツがタイムアタック寄りなのは個人的にはイマイチだった。

アクション面は、精密なパリィ入力や高度なコンボルートを要求する方向ではない。回避の性能も高く、スタミナ等のコストなしに連続で出せる。敵の攻撃表示もわかりやすく、こちらが「避けさせていただいている」感覚すらある。変に難しいより、自己肯定感が上がって良いと思う。

このゲームのRPGらしさを支えているのは、やはり属性だろう。セイバー系の属性付与、攻撃魔法、必殺技に乗る属性が明確に強く、弱点で殴る準備が整っているとボスでもかなり短期で決着がつく。具体的には、パルミナの氷属性のスキルばかり伸ばしていた初戦ではフロストギガースに手こずったが、火属性を用意して再戦した途端に一方的な展開になった。属性のありがたみを実感できる。

操作の話で言うと、僕はほぼ棒立ちでショートカットから魔法を使っていただけなので、戦闘はかなり楽だった。アクションRPGで手元が忙しくないのは助かる。

また本作の固有要素である精霊器は、探索ギミックに留まらず戦闘で使っても楽しい。たとえば月の精霊器ルナスフィアは敵の動きをスローにし、光の精霊器は敵同士を線で繋いでダメージを連鎖させる。そこに魔法を撃つと、雑魚戦が一瞬で終わったりして気持ちいい!僕のお気に入りは、パワーウォッシュじみた挙動でサブ火力になるウンディーネボトルだ。精霊器はアクションRPGであることを活かした手札になっていて良かった。

一方で、ボス戦の導入が「やりたいこと先行」に感じることもあった。土の神獣ゲールース戦は大砲を使う特殊戦になるのだが、目的地マーカーに近づくと急に砂嵐でパーティが巻き上げられ、船に着地し、神獣が現れて大砲で戦う……という流れはあまりにも唐突。大砲で戦わせるためなら何でもしてやるぜという気概を感じる。もうめちゃくちゃだよ~。

そして個人的に不満が強いのが、チャレンジ要素の精霊の住処だ。タイムアタック型で、レベルアジャストされるため育成で解決しにくい。中でも「精霊の住処・大」は、どうも特殊ルールが乗っているらしいのが厄介だった。ダークスモッグは図鑑では物理属性と火が無効で、それ以外の属性は通るはずなのに、そこでは魔法がまるで通らない。おそらく火の精霊の住処・大では「敵の魔法防御が極端に高い」といった調整が入っているのだろうが、ゲーム内ではその前提が説明されない。攻略サイトを見ても「セイバー系で属性付与して殴れ」「難易度をベリーイージーにしろ」と結論だけが書かれていて、理由もわからずに従いたくねーなとモヤモヤした。プリコネの攻略で編成だけコピーしてる感覚に近い。

JRPGらしいエレメントボードの手応え

本作の育成は、大枠としてレベルとエレメントボードで進めていく。レベルアップで基礎ステータスが伸び、戦闘中の手札はエレメントボードで決まっていく。ボードに使うEPはレベルアップだけでなく、フィールドの精霊石など探索でも増えるのが嬉しい。

エレメントボードはクラスごとにツリーが分かれており、EPを振ってそのクラスの強化やスキルを解放していく。パッシブは基本的に「そのクラスに就いている間だけ」有効だが、アクティブ系の技は他クラスでも使い回せるものが多い。属性攻撃を幅広く揃えて対応力を取るか、特定クラスを尖らせるかで育成方針に個性が出そうだった。クラス変更自体も、精霊器を装備し直すだけで行えるため、気軽なのも良い。

装備は攻撃力・防御力が上がるだけのシンプルな作り。その代わりに、カスタマイズはアビリティシードで行う。アビリティシードはクエストや宝箱から手に入るほか、モンスターが落とす「魂石」と交換できるものもあり、とにかく種類が多い。アクションやスキルの性質が変わったりするようなものはなく無難な効果が中心ではあるが、十分なカスタマイズ性を確保していたと思う。

明るく鮮やかな王道ファンタジー

本作の世界の手触りでまず印象的なのは、シリーズらしい王道ファンタジーを、明るく色彩豊かなトーンで真正面から描いている点である。鮮やかで生き生きとした、精霊が息づく世界観、JRPGに求めているものがここにあった。

そのうえで嬉しいのが、シリーズものとして見慣れた精霊やモンスターが、ちゃんと現代のディテールに引き上げられているところだ。大ボスのラインナップもマンティスアントやフルメタルハガーなど定番すぎて良い。

さらに「見た目の作り込み」で言うと、全クラスにビジュアルが用意されているのが偉い。ヴァルが重装系のクラスになった時だけ歩行時にガシャガシャいうのも丁寧な仕事だなーと思った。

あと、ブースカブーが相変わらず速すぎて笑った。

利便性か世界観か

UI関連でまず気になるのは、ジャンプとインタラクト(話しかける/調べる)が同じボタンに割り当てられていることだ。特にダッシュ中やダッシュ後はインタラクトよりジャンプが優先されるらしく、宝箱の前でよくぴょんぴょんしていた。

最終盤になってサブクエストを埋め始めると、ファストトラベルの不便さも気になった。本作のファストトラベルは竜脈を使って大陸内を移動するという設定で、大陸間移動はフラミーを経由する。世界観を優先した設計意図だと思われるが、フラミーはストーリー上の役割もちゃんとあるし、儀式的に使わせなくても良いのではないかと思った。呼び出しアイテムの使用→ロード→フラミーの演出という手順を毎回挟むため、往復が増えるほどテンポが悪くなる。メインクエストを追っている間は気になりにくいが、サブクエを埋め始めるとロード画面とフラミーの顔を見ている時間がやたらと長くなる。

そしてもう一つ。クリア後にエリスタニア王宮のイアンの部屋に何度か行くシーンがあるのだが、あまりにも遠すぎる。王宮の扉の横とかに引っ越してほしい。

新たな聖剣伝説に相応しいストーリー(ネタバレ)

本作の物語は「御子をマナの樹へ送り届ける巡礼の旅」という、王道の目的を持って始まる。その王道はプレイヤーに安心感を与えるためではなく、喪失を分かち合わせるために機能しているところが上手かった。序盤、ヴァルの善性が強すぎるのと、ヒナが良い子すぎることに調子が狂っていたが、振り返るとあれは王道から転落するための助走だったと腑に落ちた。ヒナと冒険する時間はだいたい7時間ほどで、喪失をプレイヤーと分かち合うのに十分な長さだった。

物語のターニングポイントは、オーリンを信じた二人が欺かれ、結果としてヒナが命を落としてしまうところだ。挿入歌も相まって、喪失を強く刻みつけられる。ヒナとの別れ、御子制度への疑問、そして旅のゴールの再定義が一気に押し寄せ、作品の空気が明確に変わる。

ヒナの喪失以降、物語は「喪失を抱えた人間が、世界とどう折り合いをつけるか」を前面に出してくる。主人公のヴァルとオーリン、そしてディロフォロスが全員似た種類の喪失を抱え、教科書的な対立構造として描かれる点が面白い。オーリンは恋人ライザを失い、ヴァルとヒナを騙してでも救おうとする。ディロフォロスは恋人セルリアを失い、復讐として世界を滅ぼそうとする。ヴァルはヒナを失い、……それでも守り人として旅を続ける。

「恋人を失ったので世界を滅ぼします!」は極端だが、恋愛絡みの動機は人類に一番わかりやすい題材といえるだろう。ディロフォロスが最も一般人的な価値観で共感できるまである(一般人は女神に楯突いたりしません)。余談だが、FF16のアルテマもプレゼンの途中でアルテマ子への想いを語ってくれていたら、もう少し共感できたかもしれない。

中盤以降、神獣を連続で追っていく流れはオールドRPG的で個人的に好きだった。序盤で訪れた土地を再訪し、仲間の物語を整理し直していくのも定番で良い。懐かしい構造を踏襲しつつ、ここは単に神獣を倒すだけでなく、御子として捧げられることを前提にしていた仲間たちが未来を選び直していく時間になっている。

そして終盤の着地が見事だ。因習村的なシステムに見える御子制度が、呪いに対抗するために「人間側の選択」から始まったことが明かされる。そして、人が御子としてマナの樹への巡礼を繰り返してきた循環が、最後に聖剣へと繋がる。これはまさに「新たな聖剣伝説」であり、「人間の物語」として完成度の高い着地になっていた。

個人的に好きだったのは、物語後半になってから「手紙」という形でヒナと再開させるところだ。直接会ったことのないジュリを中心に、ティアナ村の人々を巻き込んでヒナのことを丁寧に回想していく。喪失から時間をおいて、プレイヤー側に余韻を残しながら受け取らせる形になっていて、ここ数年のスクエニ作品の中でも、キャラクターの死の扱いがかなり上手い部類だと感じた。

また、ジュリの「新曲・第1560番」は、もうエンディングが始まったかと思うくらい良かった。この世界の本質を表す歌詞に、旅を経たジュリの変化まで乗っているのが最高。

クリア後と周回について

クリア後要素も一通り用意されているが、個人的に本作の面白さはストーリー体験に寄っていると感じたため、2周目は軽く触って切り上げた。追加ストーリーは、みんな行方が気になっていた”あのキャラ”が悪役として出てきて、エテラナの砂時計が壊れた原因なども回収される。ただ、敵としての格が小物すぎて、余談としてクリア後に置かれているのが正解だったと思う。

周回要素としては、エレメントボードが3周くらいで埋まる気配があり、一点もののアビリティも周回で複数個を集める前提に見える。クリア後に「マスターしたクラスのパッシブが基礎クラスで使えるようになる」といった拡張もあって、ビルド面の伸びしろ自体は感じる。……のだが、同じ探索を何周もしないとビルド素材が揃わない設計になっている点が引っかかる。1回でいいだろ……!探索は……!ブレワイのコログが1周300匹で3周して集めるとかだったら誰もやらないでしょ!

クリア後に解禁される難易度ベリーハードも、想定している遊び方がわからなかった。経験値が2倍になるメリットがあるが、強くてニューゲームで選んでみると序盤ボスは楽勝な一方、味方がレベル70台でフィールドのレベル50程度の敵に勝てないというバランスになる。Lv1からベリーハードでプレイする想定なのかな?だとすれば、精霊器だけ引き継いで最初から始めるとか、引き継ぎ設定を細かく選べる仕組みがあっても良かった気がする。個人的には、『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』のように、1周目の成長を引き継いだうえで“地続きの手応え”として2周目を楽しめる設計が好みなので、なおさら周回の楽しみ方が掴めなかった。

周回の褒めどころとしては、強くてニューゲームでは最初から精霊機が全て解放されていることくらいだった。さらに、探索報酬にも周回のモチベーションを削ぐ要素がある。具体的には、クマミツで交換できるステータスアップ系のアイテムが周回で復活しないため、集める価値がほぼなくなる。オフラインゲームでそこを縛る意味は何?

総評

本作は、物語とキャラクターを軸に「聖剣伝説の新作」として満足できる出来だった。明るい王道ファンタジーの世界を、会話密度の高い仲間たちとロケーションの多彩さで“旅”として成立させており、シリーズで見慣れた精霊や敵の質感も現代のディテールへ適切に引き上げられている。

戦闘も、アクションの精密さは求められず、属性やスキルの準備が重要なRPG寄りの手触りで良かった。一方でやりこみや、チャレンジ要素には好みが分かれる部分もあるため、ストーリー目的で軽く触る場合は特にオススメという感じ。個人的には、この方向性で『6』を出してほしいと思った。

GOOD

  • 明るくファンタジーな世界観
  • 仲間やNPCとの会話量の多さ
  • 作業になりにくい探索
  • 程よいアクション性
  • 新たな聖剣としての納得感のあるストーリー

BAD

  • ファストラが不便
  • チャレンジ要素は好みが分かれる
  • 周回の仕様が練り込み不足